アキレス腱の断裂とともに、心が完全に折れた
――柿澤さん自身がしんどかったときや、克服した瞬間、チェンジを感じたときはありますか?
「舞台上でアキレス腱を切ったときです。いろんなことが、そこでガラッと変わりました。突然、すべてをぶった切られた感じだったんですよね。アキレス腱だけじゃなくて、心が完全に折れた瞬間でもありました」
柿澤さんは’16年の主演ミュージカル『ラディアント・ベイビー 〜キース・ヘリングの生涯〜』の東京公演中に右足のアキレス腱を断裂。大阪公演が中止された。
――でもそこから立ち上がり、いまも俳優として活躍し続けています。
「否応なく休めたのがよかったのかなと思っています。歩けないので、3か月、それ以上、ゆっくりしていたんです。何もしない時間があって、ただ休んでいました。そうなると、不思議とまたやりたくなってくるんですよ。そこまで突っ走ってきて、もちろん気持ちが落ちた瞬間もあったけれど、そのとき、本当に落ちるまで落ちた。で、“またやりたい”という気持ちになったんです」
主演を務めていたミュージカルでアキレス腱を断裂。心も体も想像を絶する状態に陥ったはず。しかし体を休めたのち、柿澤さんの心に湧き上がってきたのは「またやりたい」との気持ちだった。
芸術と柿澤さんはやはり求め合っているのだろう。そんな姿をおじい様、ひいおじい様も見てくれているに違いない。
柿澤勇人(かきざわ・はやと)
1987年10月12日生まれ。神奈川県出身。
2007年に劇団四季『ジーザス・クライスト=スーパースター』でデビュー。
劇団四季退団後は、映像作品にも活躍の場を広げる。主な出演作に舞台『海辺のカフカ』『デスノート THE MUSICAL』『メリー・ポピンズ』『ジキル&ハイド』『スクールオブロック』『オデッサ』、映画『鳩の撃退法』、ドラマ『真犯人フラグ』『不適切にもほどがある!』など。2022年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で源実朝を好演したのも記憶に新しい。第31回読売演劇大賞にて優秀男優賞を受賞。5月に上演される彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd Vol.1『ハムレット』でタイトルロールのハムレットを演じる。
●作品情報
彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd Vol.1『ハムレット』
【原作】:W.シェイクスピア
【演出】:吉田鋼太郎
【出演】:柿澤勇人、北香那、白洲迅、渡部豪太、豊田裕大、正名僕蔵、高橋ひとみ、吉田鋼太郎 ほか
【HP】https://www.saf.or.jp/arthall/stages/detail/98587/