一人社会実験「30坪の畑で家族みんな食える」

 それは、大都市を捨てて、私はトカイナカって呼んでいるんですけど、都会と田舎の中間に移り住むこと。うちはね、ここから 90分ぐらいなんですけど、坪50万円くらい。けっこう高くなっちゃったんです。だから、もう少し足を伸ばして、うちより30 分ほど先に行くと、坪5万だから、100坪買っても500万円なんですよ。
 ものすごい自然環境のいいところです。うちも最初は良かったんですけど、最近バンバン家が建つようになっちゃって。畑は残ってますけど。
 そこに行って、まず食いもんは自分で作る。そのために私もずいぶん本を読んだんですよ。でも、どこにも書いてないんです。何坪の畑をやれば、家族みんな食えるのかっていうのが。実際に実験してみたら、 1アール=30坪あれば十分、食えるんですよ。

――そこで野菜とお米を作れば自給自足の生活になるんですね。

 米は田んぼがないとダメですけど、イモとかそっち系は作れるので、日当たりさえ良ければ 30坪で十分なんですね。これで食費はもう半分以下になりましたし、あと、うちは東京電力に売っているんですけど、太陽光パネルで発電して買い取ってもらって、夜とか冬場は厳しいんですが、それで十分、電気代は実質ゼロになるわけです。食費と電気代がゼロだと、実は1か月の生活費って10万かからないんですよ。
「全然いけるじゃん」ってのが実験結果として分かったんです。何がいいかっていうと、金のために歯を食いしばって、やりたくもない仕事をやり続けなくていいこと。やりたくない仕事をやるほど不幸な人生はないんですよ。
 それと、畑をやって何がわかったかって言うと、ものすごい楽しいんです。なぜ楽しいかっていうと、全部、自分で決める自由なんですね。どういう土を作るかっていうのと、どういう種や苗を植えるのか? 支柱をどう立てるのか、芽かき(ジャガイモから何本もの茎が出る時期に、よりよいものだけを選んで、他の茎を抜きとってしまう作業)をどうするのか、追肥をどうするのか? それから鳥対策、動物対策どうするのか? というのを考えると、もう毎日、頭がフル回転。農業って知的な作業なんですよ。