宝塚歌劇団の月組トップスターを務めた紫吹淳。宝塚時代はダンスの名手として知られ、ミステリアスで個性的な男役としてファンを魅了した。だが、「掃除機をかけたことがない、料理をしたことがない」と、浮世離れした生活をバラエティ番組でツッコまれたことをきっかけに存在を知ったという方も多いだろう。長年、舞台人として活躍し続ける紫吹さんの「転機」――「THE CHANGE」について伺った。【第1回/全4回】

紫吹淳 撮影/冨田望

 豪華絢爛な衣装に身に包み、磨きに磨かれたダンスや歌を舞台で披露。しかも、女性だけで男役も女役も演じきるーー。唯一無二の魅力で、熱狂的な人気を誇る宝塚歌劇団。

「私が受けたときは倍率が低くって“まだ”17倍でした」

 そう笑いながら話すのは女優の紫吹淳さんだ。そんな紫吹さんが宝塚音楽学校に入学したのは1984年のこと。15歳のときであった。受験した経緯を尋ねると、

「3歳から通っていたバレエ教室がありまして、そこの先生が“あなたに合ったところがあるよ”と教えてくださったのが宝塚だったんです」

 受験する女子学生が幼少期から恋い焦がれ、なんとしてもその舞台に立ちたいと憧れる宝塚。受験生は皆、その舞台が目に焼き付くほど何度も足を運ぶという。しかし、紫吹さんは受験するまで一度も舞台を見たことはなかったのだという。

「いや、受かるとも思っていなかったんですよ。入ったらみんな年上だし“入りたかったです”、“大好きです”みたいな人ばっかりで大変でした。ただ、憧れがなかったぶん、厳しい学生生活も“こういうものなのかな”って素直に受け入れられました。まだ子どもだった、ということもあったかな」