役を引き剥がすことがストレスに

井浦「俳優さんによって役へのアプローチって違うし、人それぞれだと思うんですが。若い頃はまったく違うことをどんどんやりたかったので、その役が終わったらそれを無理やり引き剥がして、新しい役を作っていたんです。今まで演じてきた役とまったく違う、新しいことにチャレンジしていく楽しさを、20代や30代の頃はすごく意識してやっていたんです」

井浦新 撮影/三浦龍司

 新しいことに挑む楽しさ。しかし、そこには同時につらさもあったようだ。

井浦「毎回、引き剥がすことは、だいぶストレスがかかってくるんです。役を落としてまっさらな新しい器に戻って、そこにまた入れていくという、その繰り返しが、実は僕にはあんまり向いていなかったんです。

 それでも新しい仕事が次々ときますから。そのペースを繰り返していると、ふと“なんで今まで捨てようと思っていたんだろう”と、疑問に思ったんです。捨てるんじゃなくて、それを食べて消化していけば前の役の濃い要素が体に残って、新しい表現を模索していくときの栄養になるんじゃないかと。そこから全然、違うなにかが生まれてくる。自分と役との向き合い方がだんだんと構築されていったんです」

 役を捨てずに、自らの糧とするのが井浦流なのだ。