人気ロックバンド、ユニコーンの川西幸一と、2022年に『塞王の楯』で直木賞を受賞し、コメンテーター、書店経営者などの顔も持つ作家の今村翔吾。毎年恒例となった2人のトークイベントに、デビュー作『屍人荘の殺人』がいきなりの大ヒットを飛ばし、本格ミステリー界の寵児となった今村昌弘が加わった。レジェンド級のミュージシャンと人気作家2人によるトークバトルは、音楽業界と作家業界が共通に抱える問題点などにも及び、白熱したものになった。【第5回/全8回】
ユニコーン・川西幸一×直木賞作家・今村翔吾×ミステリー作家・今村昌弘のトークバトル【THE CHANGE特別鼎談】を最初から読む
今村翔吾(以下翔吾)「出版業界の悪いところだと思うんだけど、一度本が売れると、どどっと仕事が来る。作家側は出版社との付き合い方を知らないんで、断ったらもう仕事が来ないんじゃないかと思うわけです。なので、僕は最初に15社くらいから仕事が来て、全部受けちゃったんですよ。そうなると大変で、デビュー1年目に受けた仕事がまだ終わっていないんです。昌弘さんはそういうのない?」
今村昌弘(以下昌弘)「僕は出版社の人とは会わないようにしてます(笑)。会って、一緒にごはん食べたら書かなきゃいけなくなるでしょ」
翔吾「だから、ウチの会社は取締役会で『今村先生から仕事を受ける権利を剥奪します』ということになりました。僕は人に会ったら情にほだされて仕事を受けてしまうから、最近は『僕には仕事を決める権利はないんで』って言うようにしてます」
昌弘「珍しい権利の取り上げ方ですね(笑)。出版業界は出版点数は増えてるけど、売り上げは落ちているという現状があったりします。音楽業界もサブスクが登場したりして、いろいろと変わってきていますよね」
川西幸一(以下川西)「考えてみると、僕らがユニコーンでデビューしたときって、CDがまだなくて、レコードだけだったんだよ。『BOOM』っていうアルバムね。2枚目の『PANICK ATTACK』で“どうもCDで出るらしい”“いやいや、もう少し先の話なんじゃないの”なんて言ってたのに、一気に変わったもん。そうやってどんどん変革していって、今は配信がメインだったりする。レコード会社で働く人も少なくなってきていて、営業の部署がなくなったりしているんだよね。CDが昔みたいに枚数が売れないし、そういう意味では、出版業界より音楽業界のほうが変化が大きいと思うよ」