電子書籍はお年寄りに向いている?
川西「いちばん困るのが“あれ、これ誰だっけ?”っていうときに、紙の本だったら、バッとめくって、このへんに書いてあったかな~って確認できるでしょ。でも電子書籍だと面倒くさくて……」
翔吾「電子書籍はお年寄りには向いてるっていうのがあるんですけどね。目が悪くなっても、ピンチアウトして読める。ただ、研究によれば紙の本と比べると、25%くらい頭に入ってこないらしいです」
川西「わかるわ~、入ってこないもん」
翔吾「漫画は電子書籍と相性がいい気はしますけど、小説はちょっと難しいかもしれないですね。電子書籍だと1冊単位で動くでしょ。でも、紙の本だと、ある部分を超えると、ポーンと3000冊とか刷ってもらえたりする。だから、紙の本を買ってもらうとありがたいっていうのもあるんですよね」
昌弘「だんだん経営者の顔が見えてきましたね(笑)」
翔吾「僕はこれからも作家を続けていくし、出版業界がこのまま消えるとは思っていないけど、正直言って苦しいじゃないですか。僕が力になれるなら、いろんなことをしたいって思ってるんです。昌弘さんは、この間、僕がやっている佐賀の書店にも来てくれてね」
昌弘「たまたま福岡に行く用事があったので、開店した1週間後くらいにお邪魔したんです。店内が狭いのでってことで外に机を出してもらってサインを書いていたら、通りがかった方から“なんだ、今村翔吾先生じゃないんか”ってがっかりされました(笑)」
翔吾「川西さんも佐賀に来てくださいよ。ウチの書店でもトークショーしましょうよ」
川西「佐賀は僕らが『TIME-TO-MORE』っていうテーマ曲を書いた上峰町もあるし、行きたいんだよね。なかなかコンサートで行く機会がないから、佐賀で音楽フェスでもやってくれないかなと思ってるんだけど」
(つづく)
■川西幸一(かわにし・こういち)
1959年広島県生まれ、広島県在住。ロックバンド「ユニコーン」のドラマーとして1987年にデビュー。「大迷惑」「働く男」などのヒット曲をリリースする。1993年2月にユニコーンを脱退し、バンドは同年9月に解散。2009年にユニコーンが再始動。最新アルバムは「クロスロード」。時代小説の大ファンとしても知られ、年間百冊近くを読破する。
■今村翔吾(いまむら・しょうご)
1984年京都府生まれ、滋賀県在住。2017年に発表したデビュー作『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』で第7回歴史時代作家クラブ賞・文庫書き下ろし新人賞を受賞。『童の神』で第160回直木賞候補、第10回山田風太郎賞候補。『八本目の槍』で「週刊朝日」歴史・時代小説ベストテン第1位、第41回吉川英治文学新人賞を受賞。『じんかん』で第163回直木賞候補、第11回山田風太郎賞受賞。2022年『塞王の楯』で第166回直木三十五賞受賞。最新作は『戦国武将伝(東日本編・西日本編)』(PHP研究所)。
■今村昌弘(いまむら・まさひろ)
1985年長崎県生まれ、兵庫県在住。大学卒業後、放射線技師として働きながら小説を書き、2017年『屍人荘の殺人』で第27回九鮎川哲也賞を受賞して作家デビュー。同作は「このミステリーがすごい」で1位を獲得し、神木隆之介、浜辺美波の主演により映画化された。ほかに『魔眼の匣の殺人』、『兇人邸の殺人』、『ネメシスI』。最新作は『でぃすぺる』(文芸春秋)。