PUFFYはTikTokで本人たちが知らない間に曲が広まった

翔吾「新人賞といえば、今度二つ目の賞の選考委員をやるんですけど……あんまりやるもんじゃないね(笑)。熱量はスゴイんだけど、読むのに力がいるというか、厳しくいこうとすると全部赤点になるから、誉めるところを必死で探すんだけど、それが難しい。でもいいところを見つけないと新しい才能は見つからないんだよね」

昌弘「僕らは新人賞をとったら作家になるっていう道が確保されたりしますけど、ミュージシャンの方は今どうなんですか?」

川西「今でもそういう新人賞みたいなものがあるのかもしれないけど、やっぱり今はネットでしょう。PUFFYがTikTokで本人たちが知らない間に曲が広まったりしたでしょ。アミユミちゃんに会ったとき、どういう経緯だったのか聞いたら“全然知らないの”って言ってたからね」

翔吾「ああいうのって、アーティストにお金は入ってくるんですか?」

川西「確か、何小節以上使ったらいくらっていうのがあったと思うよ」

翔吾「俺らもそういうのなんかやろうぜ(笑)。アメリカでは、YouTubeで作家本人が本を朗読するのが強力なコンテンツになってるんですよ。さっき話題に出たオーディオブックも、俳優さんじゃなくて作家が読んでいるのが配信されていて、それが500万回再生とかになってる。日本ではどうなのかわからないけど、世界的にはそういう傾向にあるみたいですよ」

昌弘「自分が書いたヒロインのセリフは読みたくないな~(笑)」

翔吾「でも昌弘さんの『屍人荘の殺人』が映画化されたときは主演が浜辺美波さんでしょ? いいよなあ(笑)。僕の本も映像化の話がないことはないんだけど、時代劇はとにかく予算がかかるんだよね。時代小説の映像化で難しいのは 、夜のシーンに子役がしょっちゅう登場する場面。夜8時以降は働かせられないからね。それから“船が出てくる”“燃やす”。これをやるともう予算オーバーなんです。僕の『羽州ぼろ鳶組』も、某映画会社の方がすごく熱意を持って映像化したいと言ってくれたんですけど、京都にある時代劇の撮影所を、上司の方に“一部なんですけど燃やしていいですか”って聞いたら、めちゃくちゃ怒られたって言ってました(笑)」

(つづく)

■川西幸一(かわにし・こういち)
1959年広島県生まれ、広島県在住。ロックバンド「ユニコーン」のドラマーとして1987年にデビュー。「大迷惑」「働く男」などのヒット曲をリリースする。1993年2月にユニコーンを脱退し、バンドは同年9月に解散。2009年にユニコーンが再始動。最新アルバムは「クロスロード」。時代小説の大ファンとしても知られ、年間百冊近くを読破する。

■今村翔吾(いまむら・しょうご)
1984年京都府生まれ、滋賀県在住。2017年に発表したデビュー作『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』で第7回歴史時代作家クラブ賞・文庫書き下ろし新人賞を受賞。『童の神』で第160回直木賞候補、第10回山田風太郎賞候補。『八本目の槍』で「週刊朝日」歴史・時代小説ベストテン第1位、第41回吉川英治文学新人賞を受賞。『じんかん』で第163回直木賞候補、第11回山田風太郎賞受賞。2022年『塞王の楯』で第166回直木三十五賞受賞。最新作は『戦国武将伝(東日本編・西日本編)』(PHP研究所)。

■今村昌弘(いまむら・まさひろ)
1985年長崎県生まれ、兵庫県在住。大学卒業後、放射線技師として働きながら小説を書き、2017年『屍人荘の殺人』で第27回九鮎川哲也賞を受賞して作家デビュー。同作は「このミステリーがすごい」で1位を獲得し、神木隆之介、浜辺美波の主演により映画化された。ほかに『魔眼の匣の殺人』、『兇人邸の殺人』、『ネメシスI』。最新作は『でぃすぺる』(文芸春秋)。