燃え尽きた武道館公演は「戦友っていう意識が強まった」

 その後、快進撃を続けたでんぱ組.incは、2014年、2017年、そして2019年には2日間にわたる武道館公演を成功させた。

「武道館のステージに立ってみた光景って、いまも脳裏に焼き付いていますね。2回目の武道館公演は、自分がしばらく活動を休止する前の最後のライブだった。3回目が夢眠ねむの卒業式。それぞれ違う思い入れのあるステージでしたね。

 最初の武道館公演は、メンバーがいるステージが下がって行って終わる演出だった。客席から私たちの姿が見えなくなった瞬間に、力が抜けてパターンって座り込んでしまって“終わったんだ……”ってもぬけの殻みたいな気持ちになったのをすごく覚えています。

 個性が強いメンバーが集まって、倒れるまで武道館公演を行った。お互いに“本当に武道館公演をやったのだよね”みたいに、燃え尽きてしまった。まさに戦友っていう意識が強まりました」

古川未鈴 撮影/冨田望

 でんぱ組.incの普段の様子を質問してみると、意外な答えが返ってきた。

「不仲だと言われたりもしたんですが、大声で喧嘩をしてしまうようなことは一度もなかったです。みんな黙々と楽屋では黙りながらLINEで会話をしていました(笑)。スタッフからも、“すごく静かな楽屋だね”って言われていました。今はメンバーも増えたので、騒がしいかもしれないです」

メンバーの話になると、嬉しそうに語ってくれた未鈴さん。これまでメンバー加入や卒業を見守ってきたからこそ、でんぱ組.incの変化を受け入れることができるのかもしれない。

(取材・文)池守りぜね

ふるかわ・みりん
香川県高松市出身。でんぱ組.incのメンバー。キャッチフレーズは「歌って踊れるゲーマーアイドル」。でんぱ組.incの活動以外にも、ゲーム関連の雑誌での執筆やゲームの動画配信なども行っている。2019年、漫画家の麻生周一と結婚を発表。2021年第一子となる男児を出産。