18歳から舞台に立ち、その後『花子とアン』『おっさんずラブ』などのドラマや映像作品でも存在感を示す俳優・吉田鋼太郎。近年では演出家としても活躍する彼の、人生における「THE CHANGE」とはーー。【第2回/全2回】

吉田鋼太郎 撮影/イシワタフミアキ

 僕は役者として舞台に立つときもあれば、演出家として舞台の袖から見守るときもあります。演出するうえで一番大事なのは、自分が何をやりたいのかっていうことを、出演者やスタッフにちゃんと分かってもらうこと。

 ひとつの台本があって、それを読めば、「だいたいみんなが考えていることは一緒だろう」と思ったら大間違いなんです。みんな、まったく違うことを考えているんですよ。

 演出家はみんなが考えている以上のことを細かく考えないといけない。そして、その考えていることはどういうことなのかを噛み砕いて「僕にはこういうことが書いてあるように読める。そういったことも踏まえて演じてほしい」と、細かく丁寧に伝えています。

 その人が演じる人物が、髪型はこうで、どういう服が好きで、どういう人生を送ってきたか……そこまでは必要ないだろうっていうところまで細かく丁寧に説明しないと、絶対に分かってもらえないんですよね。で、分かってもらえないままやると、現場が大混乱に陥ったりするわけですよ。このことは演出家としてはとても心掛けています。

 ただ、それを伝える時間が長いと他の稽古をする時間がなくなっちゃうので、いかに簡潔に伝えるかということで言葉の表現力が必要になってくるんですね。その表現力には多くの引き出しを持っていなきゃいけないと、常に思っています。