コワモテフェイスとピンクのスーツでうさんくささを漂わせつつ、ネタが始まるとウソしかつかない「架空漫談」で観客を惹(ひ)き込む、『Rー1グランプリ2024』の王者・街裏ぴんくさん。ここにいたるまでの20年あまり、なにがあっても、お笑いのことだけを考えてきた。ついに実を結んだ、街裏さんのTHE CHANGEとは。【第1回/全5回】

街裏ぴんく 撮影/有坂政晴

 白Tシャツに黒ボトムスというモノトーンコーデで取材場所に現れた街裏ぴんくさんが、バッグからおなじみのピンク色のスーツと、靴下を取り出す。

「このスーツ、シワになりやすい素材なんですよ。ちょうど昨日、新しいのが届いて。そっちはシワになりにくいんです! 靴下はユニクロの3足1000円のやつを大量に買っています」

 スーツをアイロンにかけながら、ていねいに教えてくれる。舞台上では迫真のウソ話を熱量高く披露する「ファンタジー漫談」でおなじみだが、いまはどうやら本当のことを話してくれているようだ。街裏さんは、そんなファンタジー漫談で、2024年の『Rー1グランプリ』(フジテレビ系)を見事制した。そこに至るまでの間に、「芸人を辞めようと思った」時期があったというのだ。

「2022年2月ですね、芸歴11年目以上でRー1の出場資格がない芸人による賞レース『Be―1グランプリ』で優勝したんです。でも、そこから仕事量や独演会に来てくれるお客さんの数が、そんなに変わらなかった。なかなか結果に結びつかなくて。親や知り合いに借金もあったし、嫁さんに働いてもらっていたし。自分もバイトをやるけども、続かない。マジで続かないんですよ。マジですぐ辞めちゃうんですよね」