『Be―1グランプリ』優勝後の翌日もバイトの面接に

『Be―1グランプリ』の優勝賞金50万円が手に入ったが、翌日にコンビニバイトの面接に行った。

「50万円じゃ変わらないので。そこから2023年2、3月くらいにそのバイトは辞めました。その時期、お笑いのお給料も増えていったのは確かで、バイトを辞めて、お笑いの給料と嫁の給料だけでギリギリ、という状態ですよ」

――いままでのバイトはどんなふうに辞めてきたんですか?

「いちばんひどい辞め方やったのは、タバコの工場の警備員なんですけど、7時間立っているだけなんです。立って、トラックのおじさんとか迷っている人がいたら声をかけて、“こっちですよ”と言うだけなんです。ある日、夜ふかししてあまり寝ていなかった日の翌日、10分くらい立ちながら寝ていたんですよ。それを見られて、警備会社の本部のほうに報告の電話がいって。その日の夜に“もうムリですね”と電話があって、僕は"そうですねえ”と返して」

――「いや、がんばります!」と返すのではなく(笑)。

「向こうももちろん“いや、ごめんなさい、やらせてください”があると思って言ってくれたと思うんですよ、優しさで。でも”そうですねえ”と言って、電話を切って。隣にいた嫁はびっくりしてましたね。“そうですねえ!?”って(笑)」

――なぜバイトが続かないのでしょうか。

「急にイヤになるんですよ。朝に"イヤやなあ”って」

――気持ちはわかりますが(笑)。

「ほんまにただの怠慢です。“行きたくないなあ。やりたいことちゃうしなあ”って。そんなこと、まかり通らないのはわかっているんですけど、そのたびに嫁に“すぐ探すんで、辞めていいですか?”と何度も言ってきましたね」

 そのたびに妻が言うのは「好きにしたらええやん」のひと言だった。

――結婚したのは10年以上前だと聞きました。

「そうですね、2013年です」

 それは、大阪から上京して1年後のこと。いくつもの芸能事務所の門を叩くも、厳しさを身を持って知った時期だった。

「なかなか厳しくて入れなくて。どうしようかなと思って。なんかおもしろい出方をしたいなと思って、自分の見た目を生かして悪役俳優の事務所に入りながらお笑い芸人をやろうとしていた前後ですね、結婚のタイミングは。だから、なにもない。なんでもないタイミングに結婚したんです。普通は養っていけるから結婚すると思うんですけど、そういう感じではなかったんです。それはなんというか……嫁さん以外にたぶんおらんやろうな、と思ったんです」

 結婚を決めた妻は「覚悟している」と街裏さんに告げた。出会いのきっかけを聞くと、街裏さんは、少しだけはにかみながら「僕のファンだったんです」と教えてくれた。

「高校時代からお笑いを見に行ったりしているような、かなりのお笑い好きで。ネタもよく見てもらっていて、“正直に言うて”と言っているので"ベタやな”"お客さんの集中力なくなるで”“ボケがないとキツい”とか、言ってくれます」

――的確な指摘をしてくれるんですね。

「だから、僕の芸風的に“世に出るまでに時間がかかるやろうね”と言われていました」