20歳のとき『蛇にピアス』(集英社)で第130回芥川賞を受賞して以来、コンスタントに小説を発表、谷崎潤一郎賞、柴田錬三郎賞など、きらめくような受賞歴をもつ金原ひとみさん(40歳)。作家であり2女の母であり、小説の中で「本音」を“ぶちまける”作家として女性を中心に熱い支持を得ている。【第4回/全5回】

金原ひとみ 撮影/冨田望

 インタビューがおこなわれる部屋に、金原ひとみさんはふわりと現れた。さらりと温かい風が流れる。パリで購入したという柔らかいパステルピンクのワンピースは、よく見るとさまざまな動物やスカルなどがプリントされている。そんな不思議な魅力をもつワンピースをあっさり着こなすのは、さすがにおしゃれ巧者だ。

 作家生活20年を迎えた金原さんが、初めてオーディオファースト作品『ナチュラルボーンチキン』を書き下ろした。まずは音声で配信し、聴くことを前提として、その後書籍化される小説だ。

「この企画をいただいたとき、音声で聴く小説を、文字で書くのはおもしろいなと思いました。文字で世間に発表しなければ、というこだわりは特にないんです。ただ、聴くことを前提とするので、書くときはテンポやリズムを通常以上に意識しました。
 会話も、より現実に近い、リアルなものを目指しました。文字からだと全て自分で想像しないといけないですが、今回は最初に声があるので、例えば自分が誰かに相談されたり、誰かの話に聞き耳を立てていたりして聴こえてくる話に近いもの、物語というよりも読者の現実の一部にしたかったんです。
 今回は、浜野文乃という主人公ありきだったので、彼女の生き方に寄り添いたいと思いながら書きました」