自分のバイクでのアメリカ横断が夢

 つまりは、俗っぽい言い方をすると“丸くなった”ということなんだろう。

「それは色んなことを認められるようになったということで、とても良いことだと思うのですが、もう一方で、このままで良いのかっという思いもあります。若い頃は理由なき反抗と言いますか、もっと世の中に対して怒りを抱いていたところもありました。世の中も理不尽なことばかりで表裏一体でありながら矛盾した面を持つご時世の中で、何か核となるものを追い求めて、情熱的に怒りを持つべきなんじゃないかと。それと同時に愛情というものをどんどん感じてくる歳でもありますので、見返りを求めない愛情というものを色んな方と共有出来たら良いなとも思えるようになってきました。やっぱり人間っていうのは、子供がそうであるように愛情がある方にしか進まない生き物ですから。ビジネスと夢とが混沌とする世の中ですが、それでも誰かの幸せを自分の幸せと思えるように生きていきたいですし、自分の職業とも向き合っていければいいなと思います」

 愛情の大切さを唱えるということだが、市原さん自身もプライベートでは結婚し家族を持っているが、そのことも自身の考えに大きな影響を与えている。

「涙もろくなったり、ものの有難さ、新しく生まれた愛情に対して、それを大切に育んでいく──それは身内に対してだけじゃなくて、すべての方に対して思うようになってきました。僕の父がすごく厳しく、極端な言い方をすれば『お前は寝るな。寝る間があるんだったら、人の10倍努力しろ』って感じの人だったんです。でも、普段はすごく優しく、母に対しても“いつもありがとう”とか“愛しているよ”って言葉にしていて、とても人間臭い人柄であったんですが、気が付いたら自分も同じような考え方をもっていると感じています」

 最後に、これから挑戦したいことを訊いてみた。

「バイクでアメリカを横断したいです。50年くらい前のカワサキZ1というのが愛機なんですが、今、エンジンをカスタマイズしていて、その新しいエンジンを載せて横断をしたいと思っています。元々、旅が好きなんです。行った先々で色んな経験をしたり価値観に触れてみたいんです。俳優はすべてを受け止めなければいけない職業だと思うので、善も悪も隔たりなく見てみたいんです。生きているうちにやれることは全部やっておきたいと」

 そう語る市原さんの笑顔からは少年のような無邪気さと明るさが感じられた。

市原隼人(いちはら・はやと)
1987年2月6日生まれ、神奈川県出身。小学5年生の時にスカウトされ芸能界に入る。2001年、映画『リリイ・シュシュのすべて』で主演を務める。2004年、ドラマ『ウォーターボーイズ2』で連ドラ初主演を果たし、同年に公開された映画『偶然にも最悪な少年』で日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。近作にはドラマ『正直不動産』シリーズ、や舞台『中村仲蔵~歌舞伎王国 下剋上異聞~』がある。近年は写真家としても活動している。6月~は主演作品・WOWOWにて『ダブルチートseason2』の放送開始。

【作品情報】
映画『おいしい給食 Road to イカメシ』
https://oishi-kyushoku3-movie.com/
監督:綾部真弥
出演:市原隼人、大原優乃、田澤泰枠、栄信、石黒賢、いとうまい子、六平直政、高畑淳子、小堺一機
東京・新宿ピカデリー ほか全国公開中
配給:AMGエンタテインメント
🄫2024「おいしい給食」製作委員会