「ひとりで何かに没頭する時間」を大切に

――小学生のころにそんなことを感じ取っていたんですね。しかし今では、大勢の人と付き合っていく必要のある仕事をされてもいますね。

「そうですね。小学生のころ、漫画クラブに入っていましたが、部員は学年で私ひとりでした。だから放課後はずっとひとりで漫画を読んでいましたし、ひとりで何かに没頭する時間というのは、自分のなかですごく大事でした。そうした時間はいまも変わらずとても好きです。ただ、このお仕事をはじめて、そこに新しい価値観が加わりました」

奈緒 撮影/冨田望

――新しい価値観が。

「みんなで一緒にものづくりをする楽しさ。それを教えてくれたのがこの仕事です。自分の中で、その楽しさを追求したくなりました」

――“ひとり”での時間の大切さに加えて、“みんなで”のものづくりに楽しさを感じることができた。

「初めましての人たちもいる、何十人とかそれを超えるような大勢の人たちで、同じ方向に向かってみんなで頑張る。その作業のまた面白いのが、映画という作品の力があるから、みんなが同じ方向に向かって諦めずにいられることです。だから完成したときに、みんなでまた喜びを分かち合える。そうした体験をさせてもらって、これをずっと続けたいと思えました」

 大人になってから得た価値観を大切にしていることはもちろん、小学生時代に感じた「人と比べることを手放すこと」「一人でいる時間を肯定すること」も大切にし続けている奈緒さんだからこそ、観る者に訴えかける芝居を見せてくれるのだろう。

なお
1995年2月10日生まれ、福岡県出身。高校1年生のときに地元でモデル事務所に所属。地元のテレビ番組やドラマに出演ののち、2015年に上京した。2018年、連続テレビ小説『半分、青い。』でヒロインの親友役で好評を博す。翌年に連続ドラマ『のの湯』で初主演を果たし、『あなたの番です』で第102回ザテレビジョンドラマアカデミー賞助演女優賞を受賞した。主な映画出演作に『事故物件 恐い間取り』『みをつくし料理帖』『余命10年』『マイ・ブロークン・マリコ』『陰陽師0』など。現在、映画『告白 コンフェッション』が公開中、およびドラマ『演じ屋 Re:act』が放送・配信スタート。映画『先生の白い嘘』『傲慢と善良』が控える。

作品情報
映画『告白 コンフェッション』
監督:山下敦弘
原作:原作:福本伸行、作画:かわぐちかいじ
脚本:幸修司、高田亮
音楽:宅見将典
主題歌:マキシマム ザ ホルモン
出演:生田斗真、ヤン・イクチュン、奈緒
(C) 2024 福本伸行・かわぐちかいじ/講談社/『告白 コンフェッション』製作委員会
配給:ギャガ
5月31日より全国公開