俳優とミュージシャンどちらも表現するということに違いはない

――改めてになりますが、松下さん自身は、俳優とミュージシャンどちらも続けていることが自然なこと?

「自然ですね。自分のなかでは意識して使い分けているわけでもなく、本当に自然に、現場にいけばスイッチが切り替わっています。レコーディングブースに入ったり、オーケストラと一緒のときにはピアノを弾く頭ですし、現場で監督と話しているときは女優としてのお仕事だなと思います。けれど、2つのことをやっているという意識は特にありません。どちらも自分の大好きなことをやらせてもらっていて、どちらも表現するということに違いはないと思っていることもあります」

――どちらも表現。

「音に乗せるものなのか、セリフに乗せるものなのかと違いはありますけど、どちらも自分が考えてこうだと思ったことを表現することに変わりはない。“今日は女優さんの日だからこうしなきゃ”みたいに自分に言い聞かせることもないです。本当に自然な流れで、好きなことをやらせてもらえています」

――ではこれからも。

「セリフを発していても、音楽を奏でていても、MCなどで言葉を発していても、どんなお仕事をしていても、最終的には自分だと思うんです。そこはずっと変わっていません。自分というものを、ちゃんといつでも持っていられるように。いつも俯瞰で見ながらやっています」

――職業として選んでいるのではなく、自分として表現、活動している。

「まだ夢を実現している途中だと思うし、これからも広がっていくことがあれば、どんどんやってみたい。いろんな挑戦が、いくつになってもあることは、本当に素晴らしいことだと思っています」

表現者としての松下さんは、一線で走り続けながら、まだまだ進化中。凛とした瞳の奥に自分を持って、これからも広がりを見せてくれそうだ。

 

松下奈緒(まつした・なお)
1985年2月8日生まれ、兵庫県出身。2004年に俳優デビュー。2006年に『アジアンタムブルー』で映画初出演を果たす。同年、ピアニスト・作曲家として1stアルバム『dolce』をリリース。以降、8枚のオリジナル・アルバムを発表している。2010年、漫画家・水木しげる夫妻を描いたNHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』でヒロインを演じた。主な作品にドラマ『まんぷく』『アライブ がん専門医のカルテ』、映画『砂時計』など。最新作はピアニスト役を演じた『風の奏の君へ』。数多くの映画、ドラマ、CMに出演、司会なども務め幅広い才能を生かしている。

●作品情報
映画『風の奏の君へ』
https://kazenokanade-movie.jp/
監督・脚本:大谷健太郎
原案:あさのあつこ
出演:松下奈緒、杉野遥亮、山村隆太、池上季実子
(C) 2024 「風の奏の君へ」製作委員会
配給:イオンエンターテイメント
公開中