自身の実力以上の役との出合いで頑張り方が分かるように
人生の転機から、柚希さんが学んだことを聞いてみた。
「人生の転機となった瞬間は、いくつもあります。まず宝塚に入団したとき、そしてトップになったとき。あとは星組の『THE SCARLET PIMPERNEL(スカーレット ピンパーネル)』という作品で2番手に選ばれ、“あなたが失敗したら、この作品がコケてしまう”と言われるくらい、自分の実力に対して大きな役をやらせていただいたときです。
毎日、毎日、稽古のたびに、お芝居ができなくて落ち込んでいたのですが、この役との出合いで、舞台への取り組み方も変わったと思います。それまでも全力で向かっていたのですが、やっと頑張り方が分かってきたように感じました」
舞台のことを学んだ宝塚を退団後は、いろいろと戸惑いもあったという。
「歌の先生も毎日稽古をしてくださり、本番では舞台で一人ですけど、周りにはそうやって支えてくれる方がいた。宝塚では常に周りにみんながいてくれたので、すごく安心感があった。それに比べると、退団してからは一緒に公演をつくる人たちが毎公演ごとに違うことを不安に思うこともありました。
でもいまは、その時々でもっとたくさんの人に出会えるのだと思うと、宝塚じゃない世界もいいなと思えるようになりました。いまでも、舞台に向かうときには初日に間に合わなかったらどうしようって気持ちがあります。でもいろいろな人が手を差し伸べてくださるので、舞台に立っているときは一人ではないと思えるのです」