「表面的なものだけでは判断されない」ファンの存在がいまも大きな支えに

 柚希さんにとって、舞台に立つうえでコンディションが大切という。

「これまでずっと辞めたいって思ったことはなかった。でも声が上手く出せなかったときは、自分には舞台は向いていないのかも……と弱気になっていました。でも、“練習をすればできるようになる”という希望を追い求めていたら、いつもそこに光が差すのです。その希望を頼りに、毎公演を行っています」

 ファンミーティングを行うなど、ファンとの交流を大事にしてきた柚希さん。そこには役作りに対してもこだわりがあった。

「宝塚を退団してしばらくは、作品選びも慎重になっていました。役選びもカッコ良い役でないととか、ファンの方が見たい役でないと良くないと考えていました。でもファンの方って、本当にちゃんと見てくださっているんですよね。
 ファンの方は、露出がある役とかイヤだろうなって勝手に思っていたのですが、そんなことも全然なかった。いまも応援してくださっている方は、そういう表面的なものだけでは判断されないですよね。もっと深い部分を感じ取って、応援してくださっているんだなと思います」

 ファンの応援から元気をもらっているという柚希さん。そこには、舞台に対してストイックでありながらも、宝塚時代からファンを大事にする優しさが垣間見れた。

「私の方も、ファンの方の顔を見たり、お手紙をいただいたりして、逆にファンのみなさまからパワーをもらっています。お手紙の内容からも、“こういうふうに思ってくれているんだ”とか、“こういうふうにした方が良いのか”ってすごく背中を押していただいています。
 なかには、入院中に私のDVDを見て困難を乗り越えることができた、っていう手紙もありました。私の舞台で、病気の方や元気を出したいと思っている方たちを救うことができているって分かると、本当に頑張ろうって思います」

 順調にキャリアを重ねてきたように見える柚希さんだが、転機となった瞬間はいくつもあった。すべてに対して、真摯に頑張ってきたからこそ「つらいことはない」と言い切れるのではないだろうか。かっこよく生きてきたからこそ、舞台での輝きが増しているのだと感じられた。

柚希礼音(ゆずき・れおん)
大阪府出身。俳優。1999年85期生として宝塚に入団。初舞台後、星組に配属。新人公演や主演を重ね、‘09年に星組トップスターに就任。6年に渡りトップスターを務めた。’15年5月に退団後も、ミュージカルやコンサートなど精力的に活動。第30回松尾芸能新人賞、第65回文化庁芸術祭賞演劇部門新人賞、第37回菊田一夫演劇賞を受賞。退団後の主な出演舞台に『COME FROM AWAY』、『LUPIN~カリオストロ伯爵夫人の秘密~』『マタ・ハリ』など。‘24年8月には、今年で開催5回目を迎える『REON JACK5』の公演を控えている。

『REON JACK5』
出演:柚希礼音 
汐月しゅう、天寿光希、麻央侑希、綾凰華、川本アレクサンダー、東島京
<日替わりゲスト>※出演順
東京公演:加藤和樹、黒羽麻璃央西川貴教
大阪公演:夢咲ねね、井上芳雄大貫勇輔

東京公演:ヒューリックホール東京 2024年8月9日(金)~8月11日(日)
※一般発売日2024年7月6日(土)10時~
大阪公演:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ 2024年8月29日(木)~8月31日(土)※一般発売日2024年7月20日(土) 10時~
チケット料金:12500円(全席指定・税込)
チケット情報:https://reonjack.com/