近年の主演作で言うと、映画『空白』やドラマ『俺のスカート、どこ行った?』など、重厚感のある難役からコメディまで、幅広い作品で独特な存在感を放つ古田新太(58)。今年で役者歴40年を迎え、先日は『第45回 松尾芸能賞』の優秀賞を受賞するなど一見、順風満帆にみえるが、ここまでの道のりに不安や迷いはなかったのだろうか。役者を志したきっかけやこれまでの道のり、「脇役でいい」と思った出会いなど、自身にとっての変化「THE CHANGE」を聞いた。【第3回/全5回】

古田新太 撮影/三浦龍司 ヘアメイク/田中菜月、スタイリスト/渡邉圭祐

 インタビュー取材の前には、7月7日から始まる劇団☆新感線の新作舞台、いのうえ歌舞伎「バサラオ」の製作発表会見が行われていた。会見と同じ、キャップにロックTシャツと、トレードマークともいえるスタイルで取材場所に現れた古田新太さん。

 一番に目に入ったコウモリの羽がついた靴に、思わず「かわいいですね」と伝えると「ありがとう。今日、おろしたてなんだよ」と言って取材陣に見せてくれた。そんな個性的なアイテムもさらりと取り入れるセンスの持ち主・古田さんの役者としての信念とは?

――仕事を始めた当初と今とで、ご自身の中で変わらないものはありますか。

「何を言われても断らない。スケジュールさえ合えば、何でも“YES”ということですかね」

――製作発表会見で、ご自身の武器を聞かれた際「NGがないから便利」と答えていましたが、裏を返せば、役者にとって「自我」は必要ないということなのでしょうか。

「そうです。さっきも中村倫也が“早く帰るに越したことはない”と素晴らしいことを言っていましたが、人間ってのはみんな早く帰りたいと思っているんです。そのためには、ご注文にお応えする料理人として、居酒屋の壁にかかっている短冊に書いてないメニューをお客さんから言われたときに、どう臨機応変に対応できるかどうかなんですよ。

 たとえば、寿司屋に行って“納豆の唐揚げください”と言うお客さんに対して“そんなメニュー、うちにはない”と思っていたとしても、どうにかしてその要望に応えることが大切なんです」