小説『孤狼の血』(KADOKAWA)、『最後の証人』(宝島社)をはじめとした佐方貞人シリーズ、『合理的にあり得ない』(講談社)といった作品がベストセラーの、作家・柚月裕子さん。ミステリーとしての面白さはもちろん、登場人物たちの生々しい生きざまや苦悩は、多くの読者を魅了してやまない。柚月さんが作家として体験した“THE CHANGE”について聞いてみた。【第1回/全4回】

柚月裕子 撮影/冨田望

 目の前に現れた柚月さんは、著書『孤狼の血』に描かれるバイオレンスなイメージからは、全くかけ離れている。そんな柚月さんが作家としての道をスタートさせたのは、40歳のときだった。

「それまでは主婦をやっていたんですが、あるとき地元(山形)新聞の隅に“『小説家になろう講座』(現:山形小説家・ライター講座)開催”という、案内を見つけたんですね。それは月に一回、山形に来る作家さんにお会いできるという内容でした。
 本は昔から好きでしたが、当時は本を書かれている方のお名前は書店でお見かけするぐらいしか、作家さんに触れ合う機会がなかったんです。それが“実際にお会いできるの⁉”って。レアキャラが見られるみたいな(笑)。ただ作家さんに会ってみたいという気持ちで受講しました」