今日のドラマや映画の世界で、極めて独特な光を放つ松本まりかさん。2024年は、4月期連続ドラマ『ミス・ターゲット』(朝日放送系)でGP帯(ゴールデン・プライム帯を指し、19時から23時の時間帯)で初主演を務め、映画『湖の女たち』では福士蒼汰さんとW主演、ドラマ『ブラック・ジャック』(テレ朝)では獅子面病の患者……と、さまざまなキャラを演じ、いま最も勢いのある俳優の一人である。そんな誰もが認める実績を持つ松本さんも、今日の活躍までには人に見せない長い苦労があった。そのあいだ、多くの葛藤や心の変化があったという。その先に見いだしたものは?【第2回/全3回】

松本まりか 撮影/三浦龍司

 イギリス留学の帰国後、松本さんは小劇場のステージに立つことになった。

「(劇場こそ)小さいけど、素晴らしい人たちと出会えて。そこで演じている一瞬だけが、私が息を吸えるようだったんです」

 小劇場で5~6年活動している間に、劇団ユニット「城山羊の会」に参加。劇場で松本さんの芝居を見たプロデューサーが、彼女をドラマ『ホリディラブ』に抜てきした。

「それで環境がガラッと変わったんです。それからはただただ走り続け、目の前のことに集中していくのに必死でした」

 松本さんは、自分を再度リセットすることを考えた。そこで選択した道は「事務所の移籍」だった。今年2024年最初の頃だ。

「いまの38、39歳という年齢で、大きく環境の変化が出来るチャンスがあったときに、穏やかな日常を選ぶのか、未知過ぎるけれど挑戦を選ぶのか。その二択ですごく悩んだんです。そのとき、このままでも充分かもしれないけど、この環境に甘んじていちゃいけないと思いました。それで変わらなきゃ、変わりたいと思って。退路を断つというか。初めて、自分がこの先どうやって生きていくかという覚悟をちゃんと持てたんです」

 松本さんは7月期ドラマ『夫の家庭を壊すまで』(テレ東系)で主演を務めることになった。15年にも渡り不倫をし続け、もう一つの家庭を持っていた夫に、松本さん演じる妻の如月みのりが復讐を果たす……という物語だ。

「タイトルが衝撃的ですよね(笑)。夫の、自分の家庭を壊す……ってなかなか、すごい心情だなって。人の、すごく暗部の、ものすごい怒りのエネルギーに満ちたタイトルだなって思いました。原作コミックがとても人気のある作品で多くの方に読まれているので、怒りのエネルギーを抱えていて、どうしたらいいのか分からないっていう人が、潜在的にいるんじゃないかと思うんです。私もけっこう、食らっている感じがします」

松本まりか 撮影/三浦龍司