「なぜ『愛のコリーダ』は50年も忘れられずにいるのか?」
現在も歴史的な一作として名前が上がる同作だが、2017年には第70回カンヌ国際映画祭のクラシック部門で、4Kで復元版が上映された。
「僕はちょうどそのとき、カンヌにいたんです。出演した『光』という映画がコンペティション部門に出品されたから。『光』のインタビュー中、たまたま会場で『愛のコリーダ』を観たという海外の記者から、こんなことを投げかけられたんです。“なぜ『愛のコリーダ』は、50年も忘れられないでいるのか”と。だから僕は、“『好き』と『嫌い』が引き合って、ずっと宙ぶらりんでいるからだよ”と答えました」
賛も否も、作品の糧として受け入れる藤さん。俳優歴62年の歳月で形成された人間力を、まざまざと見せつけられたようだった。
ふじ・たつや
1941年8月27日、中国・北京に生まれる。大学在学中に日活にスカウトされ俳優活動をスタート。1962年公開『望郷の海』で映画デビュー。70年代初頭まで「日活ニューアクション」で存在感を放つ。テレビドラマで2枚目俳優として人気を博していた1976年、大島渚監督作『愛のコリーダ』で主演を務め、海外にもその名を轟かせる。近年は連続テレビ小説『おかえりモネ』(NHK)や『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)など話題となったテレビドラマにも出演。7月12日公開映画『大いなる不在』で、第71回サン・セバスチャン国際映画祭のコンペティション部門でシルバー・シェル賞(最優秀俳優賞)を受賞した。
『大いなる不在』
卓(森山未來)は、ある日、小さい頃に自分と母を捨てた父(藤竜也)が警察に捕まったという連絡を受ける。
妻(真木よう子)と共に久々に九州の父の元を訪ねると、父は認知症で別人のようであり、父が再婚した義理の母(原日出子)は行方不明になっていた。卓は、父と義母の生活を調べ始めるが――。
監督:近浦啓
出演:森山未來 真木よう子 原日出子/藤竜也
7月12日より全国公開