今春で芸歴27年目を迎えたトータルテンボス。「ハンパねぇ」「しのびねぇな」「かまわんよ」等々、彼らの漫才でおなじみのフレーズは、リアルタイムでそのブレイクを観ていた世代であれば現在でもつい口をついて出てくるほど強いインパクトを残した。現在は、地元・静岡でのレギュラー番組やコンビでのYouTubeチャンネル、麻雀や野球、ゴルフなどそれぞれの趣味を活かした番組出演と、マイペースに多方面で活躍している。さらに去年はYouTubeチャンネル「佐久間宣行のNOBROCK TV」のドッキリ動画が1500万回再生の大バズり。あらためてそのスキルを見せつける格好となった。50歳を目前に控えた今振り返る、若手時代の「THE CHANGE」とは――。【第4回/全5回】

トータルテンボス 撮影/尾藤能暢

 トータルテンボスのキャリアを語るとき、3度の『M-1グランプリ』決勝進出は華々しいものとしてクローズアップされる。一方、『爆笑オンエアバトル』チャンピオン大会3連覇というもうひとつの偉業は、それに比べたらやや影に隠れている。初戴冠は2008年度大会。ラストイヤーだった『M-1グランプリ2007』直後のことだ。

藤田「『M-1』で大きくハネて認知度が上がって、信用ができてたんで『オンバト』で前以上にウケやすくなりました。変な話、多少面白くなくてもある程度やれりゃウケるみたいな状況になってましたね。2008年からはもう無双だったよね」

大村「ウイニングラン状態だった。“『M-1』ではサンドウィッチマンに負けたけど、あいつらが勝っててもおかしくなかったよね”って見られ方があって、その貯金を優位に使えた感じですね。3連覇を狙っていたわけじゃないけど“また勝った”“あれ、また勝っちゃった”って感じでした」

 『エンタの神様』や『笑いの金メダル』『爆笑問題のバク天!』などショートネタやキャラ芸人が人気を博した2000年代にあって、関東の漫才師として歩を進めてきた。だが彼らはもともとネタ重視の芸人像を思い描いてこの世界に入ってきたわけではない。

藤田「僕らの世代はあくまでテレビが理想ですよ」

大村「ネタは本当にテレビに出るための手段でしたね」

藤田「そう。それと“テレビに出れねぇやつがやるもん”ってイメージがあった」

大村「ひでぇ言い方だな(笑)」

藤田「でも実際そうだったじゃん。早く売れてネタやらなくて済むようになりたかった」

大村「『M‐1』で良い結果を出してテレビスターになるんだ、って思ってましたね」

藤田「セット売りというか、同世代の芸人同士でユニット的な感じでやってる番組が多かったんで、俺らは同じ『M-1』組の笑い飯とか千鳥とかと一緒に番組やれたらいいな、って考えてました」

 ところが、夢見た通りに『M‐1』をきっかけにブレイクし、バラエティ番組に出演する中で2人の目指すところは変わっていく。

藤田「番組に呼ばれて、失敗はしてないんですよ。ある程度爪痕は残して笑いも取ってるんですけど、あんまりハマらない」

大村「居心地もあんまり良くなかったですね。“俺が、俺が”の世界じゃないですか」

藤田「2人でロケしてるときは楽しいですよ。でも大勢いるところは嫌だったよな」

 バラエティ界は当時、ひな壇ブームに湧いていた。藤田は苦々しげな声で「ひな壇、嫌でしたねぇ」と言い切る。

藤田「気ぃ遣うじゃないですか。大物MCがしゃべってたら“邪魔しちゃいけないのかな”と思ったり、すっげーつまんねぇこと言ってるのに愛想笑いしてる自分もすごい嫌で。なんか虚しいなって。俺らは2人でコンビプレーみたいなことをしがちで、今だったら多分“いいね、面白いね”ってなるんですけど、当時は“2人でやるなよ、周りを巻き込め”“扱いづらいな”みたいな感じがあったんですよね。とにかく難しかったです」

大村「肌に合わないなっていうのはなんとなくありました。テレビスターには向き不向きがあることに途中で気付いたんでしょうね」

 そしてある日、当時のチーフマネージャーから与えられた選択肢が、現在までの彼らの方向性を決定づけることになる。

大村「“ローカル局から冠レギュラーのオファーが何個か来てる。でもそれに出てると東京での出演数は限られる。どっちがいいか、選んでいいよ”って言われたんです。そこで僕らはローカルを選びました。中央のテレビにはあんまり率先して出ない方向にいった。そのときに“中央で出たいです”って言ったら今どうなっていたかわからないですけど、やっぱりローカルでやってるほうが楽しいんですよね」

(つづく)

文=斎藤岬

トータルテンボス
藤田憲右(ふじた・けんすけ)1975年12月30日生まれ。静岡県出身。
大村朋宏(おおむら・ともひろ)1975年4月3日生まれ。静岡県出身。
小学校の同級生同士で1997年に結成。NSC東京3期生。『M-1グランプリ』2004年、2006年、2007年ファイナリスト。『爆笑オンエアバトル』第10〜12代チャンピオン。現在のレギュラー番組は『くさデカ』(テレビ静岡)ほか。
YouTubeチャンネル「SUSHI☆BOYS」https://www.youtube.com/@sushiboys9529