相手に“こうあってほしい”ということは求めない

――相手に対して理想を持たなくなった分、人付き合いで楽になったことはありましたか?

「僕はもともと、友達にも“こうあってほしい”ということは求めないんです。ずっと仲良くさせてもらっているムロツヨシさんが、バーンと売れてどんどん仕事が増えていったときも、“僕と会うのは1年に1、2回でいいから、いろんな人と付き合ってね”と伝えました。 ムロさんのスケジュールが仕事で埋まることが僕の夢だったから、“それが叶ってよかったじゃないか”という気持ちが一番なんです」

小泉孝太郎 撮影/三浦龍司

――昔から自分よりも相手のことを第一に思っていたのでしょうか?

「やっぱり若いころは、女性に対しても、あれこれ求めていましたよ。“こうしてくれ、ああしてくれ。こうでなきゃダメなんだ”とかね。今はそういう思いがなくなってきたから、力を抜いて人と向き合うことができていると思うし、これから仕事で出会う方とも、プライベートで会う人たちとも、分け隔てなくナチュラルな自分のままで付き合えるのかなと思います。

 自分のことは相手に絶対押しつけないし、地元が一緒でムロさん以上に長い付き合いがある上地雄輔に対しても“お前の幸せをずっと願っているよ”ということはずっと言い続けているんです」

「自分の幸せよりも、大切な相手の幸せを願っている」ときっぱり言った小泉さんに、何の偽りも感じなかった。その誠実さが、小泉孝太郎流の人間関係の保ち方なのだろう。

(取材・文/根津香菜子)

こいずみ・こうたろう
1978年7月10日、神奈川県生まれ。2002年にドラマ『初体験』(フジテレビ系)で俳優デビュー。近年の主な出演作に、映画『おしょりん』や、テレビドラマ『下剋上球児』(TBS系)、連続ドラマW『フィクサー』シリーズ、NHK大河ドラマ鎌倉殿の13人』など多数。また、『モニタリング』(TBS系)や『よじごじDays』(テレビ東京)のMCも務める。最新出演作に日曜劇場『ブラックペアン2』(TBS系)、ドラマ『警視庁ゼロ係~生活安全課なんでも相談室~』(テレビ東京)、映画『愛に乱暴』。

『愛に乱暴』
森ガキ侑大監督・脚本。山﨑佐保子/鈴木史子脚本。吉田修一『愛に乱暴』(新潮文庫)原作。江口のりこ、小泉孝太郎、馬場ふみか風吹ジュンら出演。8月30日(金)公開。105分。
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