“好青年”、“爽やか”なパブリックイメージへの思い
――ご自身の中で、この役、この作品がターニングポイントになったなと思うものはありますか?
「振り返ってみると、“20代だったらこの作品”とか、“30代だったらこれ”と思うものはその都度あります。僕がこの世界に入ったころは、“好青年ですね”とか“爽やかですね”と言っていただくことが多かったんですよ。
若いときはそれを求められるのも仕方がないし、好青年だけで乗り越えられたかもしれないけど、もう新人でもなければ、まだベテランでもないといった30代になった時に、2番手、3番手の役どころや、“社会派”と言われるような作品のオファーが続いたんです。ほかにも、刑事ものや医療ものといった、重厚な雰囲気のほうに自然とうまく流れていけたのは、役者としてとても幸せなことだったと思います」
――“好青年”や“爽やかな人”って一見いいイメージに思えますが、役者としてやっていくには、少し疎ましく感じられたのでしょうか。
「自分のなかでは“それはいらないイメージなんじゃないかな”と思った時期もありました。だけど、何年か前にベテランの監督さんから“小泉さんは悪役も演じるようになって、どんどん味が出てくるようになりましたね。でも、あなたは<制服顔> なんです。それは生まれ持った宝物だから大事になさってください”と言っていただいたのは嬉しかったし、自信にもなりました。
“どんなに刑事を演じたい、 医者を演じたい、スーツを着て正しい人間を演じたいと思っても、そうなれない人の方が圧倒的に多い。あなたのその爽やかさと清潔さと<制服顔> はこれからも大事になさってください“と言われたとき、最高の褒め言葉だなと思ったし、自分がそれをすっと素直に受け入れられる年齢になったんだなと思いました」
筆者もまさに「爽やか・好青年」というイメージを持っていたが、役者としてそのことを少し疎ましく思っていたという過去を素直に話してくれた小泉さん。刑事や医者役が多いのも“制服顔”という言葉にも納得。次回は、“一番嫌っていた”という政治家や、父・小泉純一郎氏への思いについて率直な思いを語ってもらったので、ぜひお楽しみに。
(取材・文/根津香菜子)
こいずみ・こうたろう
1978年7月10日、神奈川県生まれ。2002年にドラマ『初体験』(フジテレビ系)で俳優デビュー。近年の主な出演作に、映画『おしょりん』や、テレビドラマ『下剋上球児』(TBS系)、連続ドラマW『フィクサー』シリーズ、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』など多数。また、『モニタリング』(TBS系)や『よじごじDays』(テレビ東京)のMCも務める。最新出演作に日曜劇場『ブラックペアン2』(TBS系)、ドラマ『警視庁ゼロ係~生活安全課なんでも相談室~』(テレビ東京)、映画『愛に乱暴』。
『愛に乱暴』
森ガキ侑大監督・脚本。山﨑佐保子/鈴木史子脚本。吉田修一『愛に乱暴』(新潮文庫)原作。江口のりこ、小泉孝太郎、馬場ふみか/風吹ジュンら出演。8月30日(金)公開。105分。
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