緒形直人「感動したのと同時に怖さで一瞬、身を引いてしまったんです」広大な北海道で体験した忘れられない出来事とは？

広い草原で馬とふたりきり

――馬と相撲を。

「そんなこと、あんな大きな動物とできるんだ！って。“馬は本当に賢いし、どう猛な生き物じゃない”と。あるとき、スタッフさんたちが全員帰って、僕は主人公のオラシオン役の馬とふたりきりでした。だだっぴろい牧草地で、オラシオンが僕めがけて前脚を上げて、肩にかけようとしてきたんです」

――おお、それは。

「これが、あの人が言っていた相撲かと。じゃれついてきたんですよね。でも、感動したのと同時に、怖さで一瞬、つい身を引いてしまったんです。なにしろ、あれだけの大きさですから。それで、結局、相撲は成立しなかったんですけど、でも、ただ広い草原でふたりきり。何回か、彼（馬）も遊ぼうとしてくれて。人と馬って人馬一体とか言いますけど、どれだけ繋がりを感じられるんだろうと、その時に思ったりして。そこから一気に可愛くなったんです」

　足かけ１年をかけたという撮影。実際に、緒形さんはカメラの外でも、オラシオンとの間に絆を感じた瞬間があったのだ。

（つづく）

緒形直人（おがた・なおと）
１９６７年９月２２日生まれ、神奈川県出身。映画『優駿 ORACIÓN』でデビューし、日本アカデミー賞新人俳優賞をはじめ、多数の賞に輝く。９６年には映画『わが心の銀河鉄道　宮沢賢治物語』にて日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。近年の主な出演作に映画『護られなかった者たちへ』『川っぺりムコリエッタ』、ドラマ『六本木クラス』、松本清張ドラマスペシャル第一夜『顔』、２０２４年４月クールの日曜劇場『アンチヒーロー』での好演が話題を呼んだ。最新作はアイヌ民族と和人との歴史を描いた映画『シサム』、連続テレビ小説『おむすび』への出演も発表されている。

●作品情報
映画『シサム』
監督：中尾浩之
脚本：尾崎将也
出演：寛一郎、三浦貴大、和田正人、坂東龍汰、要潤、富田靖子、緒形直人
配給：NAKACHIKA PICTURES
https://sisam-movie.jp/