“役者の道一本で行く”そう決めたとき、ふたたび運命の扉が開いた
たとえ借金することになったとしても、役者の収入だけで暮らしていくんだ、と覚悟を決めたのと時を同じくして、ある監督との出会いがあった。『TRICK」シリーズなどで知られる、堤幸彦監督だ。
「’95年に公開された『さよならニッポン!南の島の独立宣言』という緒形拳さん主演の映画に、たいしてセリフもないような島民役で出してもらったんですね。そのあとから、なぜか堤監督が映画やドラマのほとんどに呼んでくださって、そこで俳優として少しずつ変わっていった気がします」
人気テレビシリーズ『ケイゾク』(TBS系)の劇場版『ケイゾク/映画BeautifulDreamer』(2000)、『明日の記憶』(2006)、『20世紀少年-第2章-最後の希望』(2009)、ドラマ『世界の中心で、愛を叫ぶ』(TBS系)、「スシ王子!」(テレ朝系)……堤監督の作品には、必ず野添義弘の姿があった。
少しずつ、少しずつ、劇団以外の仕事が増えていき、50歳になるころ、いまにつながる大きなきっかけが訪れる。
「あるとき、ラサール石井さんから“志村けんさんが主催、主演する舞台『志村魂』の脚本と演出を担当することになったんだけど、野添ちゃんと志村さんは、絶対に相性がいいと思うんだよね。出てくれない?”って言われたんですね。とてもありがたかったんですけど、そのときは別の舞台が入っていて、やっと参加させていただいたのは’08年の『志村魂3』でした」
ラサール石井の読み通り、志村と野添の相性はバツグンで、’19年の第14回まで毎回出演した。
この舞台を見に来たのが、三谷幸喜だった。
野添義弘(のぞえ・よしひろ)
1958年7月3日生まれ、大阪府出身。1982年に劇団スーパー・エキセントリック・シアターに入団。以来、劇団の本公演に出演するとともに、アクション、殺陣の振付も担当。主な出演作は、劇団本公演のほか、映画『真田十勇士』(’16年)、ドラマ『ワカコ酒』(BSテレ東)、『アンナチュラル』(TBS)、『コドモ警察』(フジテレビ)、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』、連続テレビ小説『虎に翼』、『新宿野戦病院』(フジテレビ系)、舞台『志村魂』(’08~’19年)『魔界転生』(’21年)など。
◆作品情報
劇団スーパー・エキセントリック・シアター
創立45周年 第62回本公演
『ニッポン狂騒時代〜令和JAPANはビックリギョーテン有頂天〜』
2024年10月17日(木)〜10月27日(日)
東京公演・サンシャイン劇場
2024年11月8日(金)〜10日(日)
神戸公演・AiiA 2.5 Theater Kobe
脚本:吉井美奈子 演出・三宅裕司
出演:三宅裕司 小倉久寛 劇団スーパー・エキセントリック・シアター
https://www.set1979.com/stage/2024/