“殻に閉じこもった”10代、そして“自分らしさを取り戻した”20代を回顧

 そして当時を告白。

「一度殻に閉じこもっちゃったんです。もともと、福岡時代は、いまと同じフラットな人間だったのに。あのころは東京も怖かったし、10代の不安定な自分もイヤだった。人とも全然コミュニケーションが取れなかった。そこが、徐々に徐々にいろいろなことに慣れてきて、“自分自身”に戻ってきたら、仕事もうまく回転するようになっていきました。24~25歳くらいからかなと思います」

瀬戸康史 撮影/有坂政晴

 瀬戸さんというと、はたからみれば、第2回D-BOYSオーディション準グランプリ受賞をきっかけに俳優集団D-BOYSに加入してデビューを果たし、2008年1月には、19歳で仮面ライダーキバ役に抜てき。快調なスタートダッシュに映るが、本人の意識はまた違ったようだ。

 そんな話をするうち、目の前の砂時計が・・・・・・。

「あ! 砂が落ちてる! これは、もう帰っていいってことですね(笑)!」と、おどけて腰を浮かせる瀬戸さん。「いえいえ、ぜひ裏返していただいて、別のお話を」と言うと、「そうですか? 仕方ないなぁ」とふたたび腰掛ける。たしかな演技力があるのは大前提だが、瀬戸さんには、何度も一緒に仕事がしたくなる人間力があるのも間違いない。

(つづく)

せと・こうじ
1988年5月18日生まれ。福岡県出身。’05年にデビュー。’08年には平成仮面ライダーシリーズ『仮面ライダーキバ』(テレ朝系)にて主演を務め、同年、ドラマ『恋空』(TBS系)でも主人公を演じた。舞台『関数ドミノ』(2017)で第72回文化庁芸術祭演劇部門新人賞、映画『愛なのに』(2022)で第44回ヨコハマ映画祭主演男優賞受賞。近年の主な出演作に、NHK大河ドラマ鎌倉殿の13人』、ドラマ『くるり〜誰が私と恋をした?〜』(TBS系)、映画『コンフィデンスマンJP 英雄編』(2022)『違国日記』(2024)など。現在、三谷幸喜が5年ぶりに監督を務めた映画『スオミの話をしよう』が公開中、堤真一と初共演で挑む舞台『A Number―数』が上演中。
ヘアメイク:小林純子
スタイリスト:田村和之

●作品情報
映画『スオミの話をしよう』
監督・脚本:三谷幸喜
出演:長澤まさみ、西島秀俊松坂桃李、瀬戸康史、遠藤憲一、小林隆、坂東彌十郎戸塚純貴、阿南健治、梶原善宮澤エマ
製作:フジテレビ 東宝
配給:東宝