かつてはアヒル口のベビーフェイスで語られることも多かった瀬戸康史。30代も半ばとなった今、映す角度によって、さまざまに発色してみせる豊かな俳優であることは、疑いようがない。正統派から笑いに振り切ったユニークなキャラクターまで、ドラマ、映画、舞台と異なるフィールドもスマートに行き来する、瀬戸さんのTHE CHANGEとは──。【第1回/全4回】

瀬戸康史 撮影/有坂政晴

「これ、どうしたらいいの?」

 サイトのアイコンである砂時計を手に、「これを持ちながら、ビシっと決めるとかおかしいでしょ」と言いつつ、バシっとかっこよく決めて「いや、おかしいって!」と笑う瀬戸さん。インタビューの席に着くと、砂時計を置き「砂が落ちるまでに答えなきゃダメなんでしょ?」と、おどけてみせる。部屋にみんなの笑い声と、瀬戸さんの発する明るいパワーが充満する。

 公開中の映画『スオミの話をしよう』に出演中の瀬戸さん。本作の主人公スオミ(長澤まさみ)は、さまざまな顔を持つ女性だが、スオミほどでないにしろ、人は相手によって顔を変えがちだ。目の前の、とにかく明るい瀬戸さんにも、きっと別の顔があるに違いない。

「ないです、僕。マジで裏表ないんです。どの人にもフラット。なんにも作らない。逆にどうつくるんですかって聞きたいくらい。いっつもこの感じなんです」と真っすぐ答える。それでも、ずっとそうだったのかと粘ると、デビュー当初は、“本来の自分自身”ではなかったと教えてくれた。

「仕事をはじめたばかりのときは、楽しかったんですけど不安定でもありました。どうしても周囲と比べてしまって、“あの人はあんなにドラマとかに出ているのに、自分は出られていない”とか、若いから当然なんですけど、経済的な面でもきつくて。でも、親から仕送りをもらうのは恥ずかしくて、甘えるのはイヤだったんです。自分でどうにかしたくて、コンビニ弁当でしのいだりしてましたね」

──アルバイトをしたりは?

「いや、アルバイトは一度もしてません」

──アルバイトに時間を取られて本末転倒にならないように、でしょうか?

「単純に東京が怖かっただけです(苦笑)。当時は事務所の寮に住んでたんですけど、福岡から上京してきて、都会の知らない人たちと会話なんて、絶対に無理! と思って。だからアルバイトなんてできませんでした」