<ある事件をきっかけに音楽活動を封印し、質素に暮らすかつてのロックスター>を描いた映画『はじまりの日』。主人公の「男」を演じた中村耕一さん自身が「半分くらい僕ですね」と語るように、JAYWALKとして大ヒットを飛ばし、自らの事件により一線から姿を消した中村さんのヒストリーと重なる。映画初主演となる本作に挑むことになった思い、そしてそこに重なる「THE CHANGE」は――。【第2回/全3回】

中村耕一 撮影/有坂政晴

 初体験となる映画の撮影。「毎日が新鮮でした」と語る中村耕一さん。日比監督からは「演じなくてよい」と言われていたそうだが、それでも「演じる」ことへの不安はなかったのだろうか。

「もちろん不安はありましたし、基本的なことが分かってないので戸惑うこともあったのですが、撮影現場自体は楽しかったです。やることなすこと、例えば音楽のシーンにしても、通常僕らがライブハウスなどで歌うのとは音楽表現が違う。そういう一つ一つが新鮮だったんですよね。よく“映画の撮影は待ち時間も長いし、大変だよ”というのを耳にしていたんですけど、1日は早かったです。撮影期間はあっという間に終わった、という感じがします。
 あとは、なんといっても周りの役者さんたちの凄さに驚かされました。スイッチの入り方がミュージシャンとは全然違うんです。役者さんは、カチンコがパンとなった瞬間にガっと変わるんですよ。高岡(早紀)さんなんて、もう怖くて怖くて(笑)。いや、普段は優しくてかわいらしい方なんですけど、この作品のこの役に入ると、パッと変わる。竹中(直人)さんもそうです。竹中さんなんて、とにかく始終周りを明るく楽しい雰囲気にしてくださるんですけど、撮影に入ったら切り替わる。すごいプロたちを見た気がします」