『何も言えなくて…夏』は間違いなく一つの「CHANGE」なんですけど…

 映画『はじまりの日』の中に出てくる元ロックスターの「男」は、活躍の場を失い、履歴書を書いて、就職活動をする。中村さん自身は事件後どのような道のりを歩んだのだろうか。

「事件の後、職は探しました。やっぱり音楽辞めよう…というか辞めなきゃいけないという状況だったので、コンビニにあるような就職情報の冊子。ああいうのを見て探してみるんですけど、やっぱり年齢が年齢だったので、なかなかないんですよね。あの映画の通り、なかなか仕事は決まらない。見つけることができなかったですね。そこで助けてくれたのがミュージシャン仲間であり、家族であり、近所の人であり…。この映画の中で描かれているように周りの人の存在って本当に大きいものなんです」

 中村さんにとっての「THE CHANGE」というと、JAYWALK『何も言えなくて…夏』の大ヒットも大きな転換点だったはずだと思い、当時の思いについてうかがうと。

「『何も言えなくて…夏』は間違いなく一つの「CHANGE」なんですけど、実はその頃そんなにヒットした感覚がなかったんです。『紅白』(1993年『第44回NHK紅白歌合戦』)に出させていただくとなった頃になって、「へぇそうなんだ」という感覚で。いや、もちろんヒットしてる実感はあったんです。じわじわと。アルバムのキャンペーンで各地に行くじゃないですか。そうすると、その地方の放送局の人から、アルバムの中の『何も言えなくて』(『何も言えなくて…夏』のリアレンジ前の楽曲)を「すいません、許可も取らずにウチの番組で勝手に使わせてもらってます」みたいなことを言われたりするんです。あっちこっちでそういう話が聞こえてくるんですよね。だから本当にじわじわ。ドカーンと売れて一気にという感覚は全くなかったです。
 『何も言えなくて…夏』は、僕ら自身にとって大きな転換点ではあったんですけど、どこか冷静な部分もあって、状況が日々変わっていく中でも結構客観的に見ていました。流されることもなく、だったと思います。デビューから10年経ってましたからね。その間、僕らを追い越していくバンドをたくさん見てきたんです。中には態度が急変してしまうバンドもいて、絶対ああはならないぞ、というのはあったので(笑)」