故郷のためにも、14日目に必ず優勝を決めたい

 翌千秋楽は、関脇・阿炎に敗れてしまったものの、堂々の13勝2敗の優勝を決めた大の里。

 館内での優勝力士インタビュー中には、「番付編成をする相撲協会審判部が、臨時理事会の招集を八角理事長に要請した」というニュースも飛び込んできた。一方で、9月21日から22日にかけて、故郷・石川で記録的な大雨による水害が発生するという出来事が起きた。

「(水害を受けた)故郷のためにも、14日目に必ず優勝を決めたいと思っていました。そして、今回の僕の優勝で、少しでも明るい話題を届けたい……と。地元の人たちが元気になってもらえたらいいと思います」

 と、故郷への思いを口にした大の里。

 臨時理事会が開催されたのち、大関が誕生しなかったことは、かつてない。これで事実上、「大関・大の里」の誕生が確定した。

 石川県河北郡津幡町に生を受けた大の里こと、中村泰輝少年が相撲を始めたのは小学1年生の時。幼い頃から、高校野球などの野球観戦が大好きだったことから、「野球をやりたい」という泰輝に相撲を勧めたのは、アマチュア相撲経験者の父親だった。

「最初は、相撲をやりたいという感じじゃなかったんですけど(笑)、体も大きかったので地元の津幡町少年相撲教室に通い始めたんです。最初は勝てなかった相撲なのに、勝てるようになってきたら、だんだんおもしろくなってきて……」