9月25日に昭和以降最速となる初土俵から所要9場所での大関昇進を果たした大の里。身長192cm、体重182kg、石川県津幡町出身の24歳。小学校を卒業後、親元を離れ新潟県の中学に“相撲留学”、日体大に進学後は「アマチュア横綱」に輝くなど数々のタイトルを獲得した。大相撲に幕下付け出しデビューからまだ1年半ほどで優勝2回、大関まで駆け上がった。まぎれもなく、いま最も注目されている力士である。大の里泰輝のTHE CHANGEとはーー。【第2回/全5回】

大の里

 大相撲秋場所14日目。

 前日まで12勝1敗の成績の関脇・大の里は、過去3度、下手投げで苦杯を舐めている大関・豊昇龍との対戦を迎えた。

 この日、大の里を追う3敗の関脇・霧島らは、おのおの勝って3敗を守った。しかし、2差の開きは変わらないので、この一番で大の里が豊昇龍を破ると、2度目の優勝が決まる。

 結びの一番、両国国技館は割れんばかりの歓声に包まれている。

 勝負は一瞬だった。

 立ち合いから、モロ手突きで豊昇龍を押し込んだ大の里が、そのまま前に出て、押し出しの勝利。

「大の里~!」

 今場所限りでの定年退職が決まっている、38代木村庄之助の勝ち名乗りが響く中、気合いが入った表情のまま、懸賞金を受け取る大の里。

 13勝を挙げて、大関の座を確実にした大の里は、

「まだ1日ありますが、14日目に(優勝を)決めたことはうれしいです。(勝てば優勝の一番は)集中して、何も考えずに行けました」

 と、引き締まった表情で、豊昇龍戦を振り返った。