マツコ・デラックスが、「いま一番好きな歌舞伎界のプリンス」として紹介したこともある(『アウト×デラックス』フジテレビ系)、二代目尾上右近。歌舞伎役者としての活躍はもちろん、テレビや映画、さらにはバラエティなどでも活動し、「けんけん」の愛称でも知られる右近さんは、江戸浄瑠璃清元節における七代目清元栄寿太夫の名跡でもある。歌舞伎と清元の二刀流で輝く伝統文化のプリンスは、さらに昭和の映画スター、鶴田浩二を母方の祖父に持つ。伝統芸能と映画界の血を受け継ぎながら、自身の力で輝く右近さんのTHE CHANGEとは──。【第2回/全4回】

尾上右近 撮影/有坂政晴 スタイリスト/三島和也(Tatanca) ヘアメイク/白石義人(ima.)

 新作映画『八犬伝』にて、自身につながる三代目尾上菊五郎を演じる右近さん。オファーを受けたときには、特別な思いが湧き上がったに違いない。

「よほどの理由がない限りは、僕はオファーをお断りしないスタンスです。ただ今回は、たしかに先祖の役を演じる意味合いも入ってきます。お話を伺った際、曽利監督の描きたいことがすごく伝わってきました。歌舞伎のシーンはわずかですが、その劇芝居を通じて、馬琴(役所広司)の中に、大きな揺らぎが生まれる。彼の次なる変化につながるきっかけになる、とても重要なシーンだと感じました。そこに呼んでいただけるなら、ぜひと」

──演目は「東海道四谷怪談」。右近さんがお岩を、お岩を裏切る夫、伊左衛門を演じる歌舞伎役者、七代目市川團十郎は、中村獅童さんが扮(ふん)しています。

「今回、獅童さんが先に決まっていました。僕は普段から、あらゆることをやらせていただいて、いろいろな道を切り開いていきたいと思っているのですが、獅童さんはとても大きな存在です。その獅童さんが道を切り開いていくきっかけになったのが、映画『ピンポン』。その監督である曽利監督と獅童さんが一緒にお仕事をする現場に、自分も今回のようなポジションで携われることに、大きな意味を感じました。なので、まずそこで“ぜひ!”という感じでした」

──まずは獅童さんの存在が大きかったんですね。とはいえ、お岩さんは、実際に三代目菊五郎さんの当たり役です。挑むことにプレッシャーは。

「三代目菊五郎を見た人はいま誰もいませんから。プレッシャーは特にないです。強いて言うなら、やるなら“オレが一番正解だぞ”と思ってます(笑)。プレッシャーがあったとすれば、この作品に参加させていただいた大きな動機である、尊敬する獅童さんに“プレッシャーをかけたい”ということでした」

──獅童さんとの共演がプレッシャーになったのではなく、プレッシャーをかけたいと。

「感謝して、尊敬していればこそです。先輩にプレッシャーをかけるということも、後輩の務めだと思うし、刺激を与える存在にならなくてはと思っています」

尾上右近 撮影/有坂政晴