小説賞の大賞を受賞、プロ作家へ

 転職後、小説執筆に専念できる環境を得たことで、揺るぎない信念がさらに確固たるものになっていった。そしてわずか2年後の20年10月、『元彼の遺言状』で第19回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞する。

「それまでは、小説賞に応募して一次で落ちることが続いていたんです。一次通過がいちばん難しいんですよね。でも、おそらく一次はひとりの読み手しか読んでいませんし、下読みの方が読んだ作品たちの中に宮部みゆきさんや東野圭吾さんの作品があったら、私がどんなにいい作品を書いても通過するわけない。だからけっこう運の要素もあると思っていて、落ち込んだり焦ったりすることはありませんでした。そもそも、最初のころは本当に小説が下手でしたしね」

新川帆立 撮影/松野葉子

「書いているうちに、少しずつ“上手くなっているな”という実感を得た」矢先、一次通過の連絡が届いた。そして二次、三次を通過したと思ったら、いつのまにか大賞を手にしていたという。

 同作は60万部を突破する大ヒットを記録したが、その背景には新川さんの戦略もあった。