新川さんが肝に銘じる大先輩作家の言葉とは?

「まずは“なにがなんでも、デビュー作を絶対に売らなくちゃいけない”と思っていました。というのは、デビュー作が売れるか否かで作家としての生存確率が大幅に変わるので。だから、売れるためにできることは、ぜんぶやったつもりです」

 多数の取材を受け、編集者やデザイナーの仕事に全力で乗り、「最大出力でデビューしたつもり」という新川さんに、結果はついてきたのだ。

「着実にやればちゃんと反応が返ってくるんだな、と、安心しました」

「変化、チェンジ」という言葉から思い浮かべることをたずねると「生き残るために必要なこと、ですかね」という答えが返ってきた。

「森村誠一さんという大先輩作家の言葉で、“作家は下りのエスカレーターを駆け昇っていかなければならない”っていうのがあって。エスカレーターが下っていくなかで、自分がのぼりつづけて初めて同じ場所にいられる、といった意味合いなんですけど、私も常に今のままじゃダメだと思って変わっていかなくちゃいけないな、と。なので、シリーズものだけじゃなくていろんなものを書こうと思っています」

 新川さんが描く物語の弁護士が依頼人と真摯に向き合うように、自身も真摯に、小説に向き合い続けている。

■新川帆立(しんかわ・ほたて)
 小説家。91年2月、アメリカ・テキサス州ダラス生まれ。弁護士として法律事務所での勤務を経て、20年10月、『元彼の遺言状』で第19回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞、21年1月より作家業に専念する。おもな著書に『競争の番人』シリーズ(講談社)や、『先祖探偵』(角川春樹事務所)、『令和その他のレイワにおける健全な反逆に関する架空六法』(集英社)、23年6月『縁切り上等!-離婚弁護士 松岡紬の事件ファイル-』(新潮社)ほか多数。
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