新川帆立は、綾瀬はるか主演の『元彼の遺言状』や坂口健太郎が主演した『競争の番人』などドラマ化された大ヒット作で知られる小説家だ。しかし、そのキャリアは尋常ではない。「小説家になる前に、経済的基盤を確保するために弁護士になった」という言葉のとおり東京大学に進学し、司法試験に合格。弁護士として法律事務所で勤務したのち、小説家になった。唯一無二の道を歩んだ理由と「THE CHANGE」に迫る。【第5回/全5回】

新川帆立 撮影/松野葉子

 イギリス在住で、取材を実施した日は短期で日本滞在中だという新川帆立さん。その前はアメリカ・ボストンやシカゴに住み、学生時代には宮崎、茨城、東京と住まいを変えたが、「ずっと同じ場所にいろと言われると、人生が詰んだようなすごく暗い気持ちになる(笑)」といい、引っ越しは苦ではないという。ただ、ひとつ難点がある。

「海外では手に入らない日本の本を、編集者さんからなるべく紙で送ってもらっていますが、1年くらい住んでいると本棚ひとつぶんくらいの本が部屋に溜まってしまって。引っ越しをするときに、それを箱に詰めて日本に送る作業が……大変だなあ……と。本は捨てられない性分なので、持って帰るしかないんです」

 現在の新川さんのライフスタイルだと、電子書籍をKindleで読むほうが合っていそうだが、「どうしても急ぎでほしいときはKindleにしますが、紙の本がいいんです」という。そこには、こんな理由があるという。

「このインタビューもネットに掲載されるから矛盾してしまいそうですが、ネットやSNSで触れる文章と、紙の本は、文章の重みや密度が違うと感じています。言葉遣いやファクトチェックなどを含めて」