『元彼の遺言状』が生まれたきっかけは名作のヒロイン

 書くために、そしてアイデアを生み出すために、やはりやることといえば、時間をかけて丁寧に作った作品に触れること。

「小説に限らず、映画でもいいですし、いい作品に触れることが『書きたい』という原動力になるんです。たとえば、『元彼の遺言状』(宝島社)を書いたきっかけは、マーガレット・ミッチェルの『風と共に去りぬ』を読んで“こういうのが書きたい! 必ずしも性格がいいわけではない、癖の強い女の子を、私もこんなふうに魅力的に書きたい!”と思ったことでした」

 最新作『縁切り~』のきっかけとなった作品は、貴志祐介の『悪の教典』(文藝春秋)だという。

「“貴志さんヤバい! うますぎるでしょ!”としびれました。この完成度のものを自分が書くには、どうすればいいのだろうか……と自問自答した結果、私が完成度高くリアリティを持って書くことができるのは、リーガル系だなと。さらに、男性は書きづらい女性目線が大きく関与するような話だな、と思いました」

 小学生のころから小説家を志し、いくつもの「THE CHANGE」を経て、新川さんは小説家としての精度をブラッシュアップしているようだ。

■新川帆立(しんかわ・ほたて)
 小説家。91年2月、アメリカ・テキサス州ダラス生まれ。弁護士として法律事務所での勤務を経て、20年10月、『元彼の遺言状』で第19回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞、21年1月より作家業に専念する。おもな著書に『競争の番人』シリーズ(講談社)や、『先祖探偵』(角川春樹事務所)、『令和その他のレイワにおける健全な反逆に関する架空六法』(集英社)、23年6月『縁切り上等!-離婚弁護士 松岡紬の事件ファイル-』(新潮社)ほか多数。