観客から期待されることと、自身が届けたいことのギャップ
僕自身“これはこのまま最後までできないぞ”と思って、考えたときに、“影アナウンス”をやるようにしたんです。本編で喋るのは嫌だったので、終わると舞台袖に行って“本日の三上博史公演はこれで終了となります。足元に気をつけてお帰りください”みたいなことを毎日やってバランスを取っていました」
求められるものと、届けたいものへのギャップで押しつぶされそうになった20代の頃。それでも表現そのものには迷いなく突き進み、今回はかつて演じたヘドウィグとしてライブステージに立つ。求められる世界と届ける世界。今は三上さんの中でそのアプローチは明確になっているようだ。
「今回は皆さんが求めているものや、何を見たいのかが、すごくよくわかる。“三上博史がヘドウィグを歌う”というシンプルな形でもいいのかもしれないけど、それではもう、皆さんが許さないだろうと思うんです。だからヘドウィグの扮装をします。あとはもう、ヘドウィグの世界に皆さんを連れていきたいです。突き放してるんだけど、ものすごく温かいセーフティーネットがある世界」