転機となった作品との出合いは、朝ドラのあとに訪れた
必死になってこなした『ウェルかめ』だったが、その後、倉科さんが転機になったというドラマ作品『名前をなくした女神』(11年放送/フジテレビ系)に出合う。この作品で倉科さんは主人公の敵役であるヤンママを演じた。
「プロデューサーさんが、“いままでにない倉科カナが見たいんだ”って言ってくださったんです。パブリックイメージではない、みんなが見たことのない一面を表現してほしいって、そこまで信頼していただけるなんて、役者冥利(みょうり)に尽きることで、すごくうれしかったです。しかも朝ドラの清純な役から一転して悪女なので、見てくださった方もびっくりしたみたいです」
朝ドラヒロインから悪女へ。すごい振り幅だが、倉科さんは楽しみながらやっていたという。
「オファーが来る役が、前にやった役の延長線上だったりすることが多くて、ちょっと残念だなって思っていたんです。でもそのときは見たことのない役で、私にベットしてくれたというか、すごくやりがいがありましたし楽しかったですね。ただ、至らないことはたくさんありましたから、もっともっと探求していきたいなという気にもなりました。
やっぱり、前と同じものを求められると、どうしてもこちらも飽和状態になって、楽しさというものを見失ってしまうんです。そういうときに新鮮な役をいただけるというのは、新たな楽しみが生まれますし、原点回帰ではないですけど、お芝居って面白いなって思える機会になるので、すごくありがたいですね」
世間的には、倉科さんといえば『ウェルかめ』のイメージも強いだろう。しかし、見たことのない世界を見たいと芸能界に飛び込んだ倉科さんが、演じることの楽しさを知ったのは、新たな役柄に挑戦した『名前をなくした女神』だったのである。
倉科カナ(くらしなかな)
1987年12月23日生まれ、熊本県出身。高校3年生のときに「SMAティーンズオーデション2005」に応募。グランプリを受賞し、’06年に「ミスマガジン2006」でグランプリに選ばれる。’09年にはNHKの連続テレビ小説『ウェルかめ』のヒロインを演じ、その後はさまざまな映画・ドラマ・舞台で活躍。現在配信中のLeminoオリジナルドラマ『情事と事情』、’25年1月放送予定のドラマ『TRUE COLORS』(NHK BS)では主役を演じる。