映画字幕翻訳者の戸田奈津子さん。昭和・平成・令和を「字幕」と「通訳」の“二刀流”で映画界を牽引してきた。しかし86歳となった昨年、「通訳」引退を発表。ちょうど大ヒット映画『トップガン マーヴェリック』日本公開の直前、主演のトム・クルーズ来日のタイミングだったこともあり、大きな話題となった。
 とはいえ、“本業”の「字幕翻訳」はまだまだ現役、7月21日公開予定の『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング』の字幕も手掛けている。
「後悔はありません。映画が好きだから」という某転職サイトのCMでの言葉通り、生涯を大好きな映画に捧げた女性、その人生が変わった「THE CHANGE」とはーー。

戸田奈津子 撮影/THECHANGE編集部 

通訳引退が大きなニュースに!

「あんなに大ごとになるなんて思いませんでした。私としては、一通訳に世間がそんなに興味を持っているとは思っていませんでしたから。あの反響には、本当に驚きました。なんでああいう具合になったのか、わかりません(笑)」

 とある休日の昼下がり。都内某所のレストランで「THE CHANGE」のインタビューに答えて下さった戸田奈津子さんは、通訳引退を発表した時のことをこう振り返った。

 「字幕」をやりながら「通訳」もする。この二足のわらじを履いている人は戸田さんぐらいしかいないのではないだろうか。同じ英語を扱う仕事とはいえ、字幕翻訳と通訳はまったく違う仕事なのだ。

「実を言うと、以前から通訳の仕事は辞めたかったのです。だってバイリンガルでもない私の通訳はプロとはいえないし。もともと通訳がやりたかったわけではなく、字幕翻訳がやりたくて映画業界に入ったら、たまたま通訳をやることになってしまっただけですから。ただ通訳をやるチャンスが来て、いろいろな人たちにお会いできるのはとても楽しかった。スターはもとより監督の興味深いお話もたくさんうかがえて。だから、ずるずると続けて来たのですが。正直なところ、1度として通訳が“本業”だと思ったことはありません」

 洋画黄金期に字幕と通訳との“二刀流”で活躍し、長く日本の洋画界を支えてきたが、昨年(2022年)通訳を引退すると発表。まさに「THE CHANGE」であった。