漫画ではない「投稿」も考えていた

 初めての投稿が人生を大きく変えたという江口さんだが、じつは、漫画の前に別の投稿をしようとしたことがあったそうだ。

「高校時代にどっぷりフォークにハマって、自分で曲を作ったりしてたんです。ラジオの投稿コーナーにデモテープを送って、優勝した人は流してくれるみたいなのがあったんですよ。それに送ろうと思ったんです。カセットに3曲入れて封筒にまで入れたのに、それは出せなかったんですよね。でも、漫画は投稿することができた。なんででしょうね、子供の時から好きだったから、漫画だったらなんとかいけそうっていう妙な自信があったのかもしれないですね。

 決断する時って、鈍感力っていうのかな、そういうものも必要だと思うんです。あの時、作った曲を面の皮を厚くして出してたらまた変わってたかもしれない。だから自分で判断してダメ出ししちゃうっていうのはダメだと思いますよね。そこは鈍感に委ねた方がいいような時もあるんじゃないでしょうか。漫画はダメだとか思わずに出せたので、鈍感っていえば鈍感でしたね」

 ラジオへの投稿はできなかったが、その数年後に漫画を投稿し、漫画家としてデビューすることになる。江口さんにとって、「投稿」は大きな分岐点となった。もし、思い切ってデモテープを投稿していたら、そのまま音楽の道に進んでいたかもしれない。