「好奇心をなくしちゃいけない」といつも自戒してます
「まったく映画に関係ないお友だちは他にも大勢います。たとえば、10歳くらい年下の女性だけのグループとかね。まぁ、私はどこへ行っても最年長ですけど(笑)。その中には、社会心理学の分野の方もいて。たとえば最近はトラウマがげんいんで若い人の犯罪が増えているとか、そういう精神分析を研究していらっしゃる方の話って、普段はうかがう機会がないでしょ。ちょっとした出会いで意気投合して、いまでは定期的にお会いしてます」
その交友関係は広く、元ファッション業界や広告代理店関係のお仲間、食いしん坊だからとシェフのお友だちも多いそうだ。
「本当に知らない世界を見るのは、興味をかき立てられるし、楽しい刺激になります。歳を取ると、だんだん億劫になってくるでしょ。だから“好奇心をなくしちゃいけない”といつも自戒してるの。私の同級生に会うと、周りが亡くなったり体が動かなかったりで、友達が減っていく話ばかり。新しい世界を知る機会なんかないでしょ。でも、ありがたいことに、いまの私はその反対。やはり幾つになってもよい刺激は必要です」
新しい出会いを求める旺盛な好奇心と旺盛な食欲が元気の源なようだ。
戸田奈津子(とだなつこ)
1936年生まれ。東京都出身。映画字幕翻訳者。津田塾大学卒業後、生命保険会社に就職するも1年ほどで退社。通訳や翻訳などのアルバイト生活を続けながら映画字幕翻訳者を目指した。『地獄の黙示録』(1980年)でフランシス・フォード・コッポラ監督がフィリピンロケの中継地点として日本に滞在した際にガイド兼通訳を任される。これを契機に字幕翻訳者としてデビュー。以後、数々の映画字幕を担当し、ハリウッドスターとの親交も厚い。2022年に通訳引退を発表。