青春ファンタジー映画の傑作のひとつとしていまなおファンの多い『ふたり』で、当時若干18歳でありながらも圧倒的な存在感を放った俳優・石田ひかり。1992年秋から93年春にかけて放送されたNHK連続テレビ小説『ひらり』のヒロイン・藪沢ひらりを演じ、国民的な人気者となり、年末の紅白歌合戦では2年連続で司会を務めた。平成を代表するドラマ『あすなろ白書』(93年・フジテレビ系)をはじめ、以後も数多くのドラマ、映画、舞台などで活躍。結婚、出産を経て、近年は母親役としての活躍が多いが、今秋放映されたドラマ『全領域異常解決室』では夜を治める”神様”役が話題を集めた。10代の頃から芸能界に身を置き、様々な体験を経た石田さんのCHANGEについて聞いてみた。【第2回/全4回】
中学生でアイドル歌手としてデビューした石田さんだったが、ヒットには恵まれなかった。しかし、高校3年生の時に出演した映画『ふたり』での大林宣彦監督との出会いが大きな転機となった。18歳の夏に撮影した『ふたり』は、事故死してしまった姉・千津子(中嶋朋子)とその妹・実加(石田)の共同生活を描いた青春ファンタジーで「新・尾道三部作」の第1作として今でも語り継がれる作品である。
「大林監督はとても穏やかで、何もかも受け入れて下さる、本当に海のような方でした。太平洋のようでもあり、瀬戸内海のようでもあり。現場では毎日台本が変わり、どんどん台本が分厚くなっていったんですが、どんな画を撮るのかというのは監督の頭の中にしかないんです。私にとっては映画そのものが初めてでしたし、比べるモノも無いので、疑問に思うこともなくて、がむしゃらに前に進むだけでした。みんな何をやっているのか判らなくなっているんですけど、とにかく監督を信じてやっていくと、素晴らしい作品が出来上がる……という現場でした」