やっぱり朝ドラは大きな目標でした

 『ふたり』が公開された翌年に放映されたドラマ『悪女(わる)』でも注目を集めた。落ちこぼれOL・田中麻理鈴(石田)が出世を目指し奮闘する姿を描いたこのドラマをプロデュースしたのは伊地知啓さん。伊地知さんは沢田研二主演『太陽を盗んだ男』、薬師丸ひろ子主演『翔んだカップル』、『セーラー服と機関銃』や『あぶない刑事』シリーズなどのヒット作を手掛けた名プロデューサーであった。伊地知さんとの出会いもまた大きな影響を与えた。

「伊地知さんって、いつもニコリともしないで怖~い顔をしているんです。大林監督とは正反対。でも、すごくシャイな方でした。『悪女(わる)』の後で、映画『あいつ』(91年)という超能力を題材にした作品をプロデュースされ、私も出演させていただきました。その後、私がもう少し大人になってからは、食事に連れて行ってもらったり、色んな相談に乗ってもらったりして保護者のような存在になりました」

 そして93年にはNHK朝ドラ『ひらり』で相撲好きなヒロイン・藪沢ひらりに抜擢された。

「やっぱり朝ドラは大きな目標でしたので、ヒロイン役に決まった時はとっても嬉しかったですね。でも、あの頃の私って本当に何も考えていなかったんですよ。とにかく、あまり悩みも無かったですし。だから今、共演する若い役者さんに“ここはどうしたら良いですか”なんて訊かれると“偉いな~”って思うんですよ。私がこのぐらいの時ってそういうこと考えたこと無かったなって。でも、作品自体は本当に面白かったし、最近はオンデマンドでも見られるので、親にもう一回見せてあげられるのはとても嬉しいです。『ひらり会』という集まりがあるのですが、この前、20年振りぐらいにスタッフやキャストが集まったんです。感慨深かったですね」

 その頃の石田さんといえば、忘れてはならないのが平成を代表するドラマ『あすなろ白書』(93年)。5人の大学生(石田ひかり、筒井道隆、木村拓哉、鈴木杏樹、西島秀俊)の学園生活を描いた青春群像劇だ。最終回の視聴率は31.9%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)を記録し、社会現象にもなった。

「『あすなろ会』というのもあるんです。開きたいんですけど、皆さん多忙なのでなかなか集まれないのが悩みです。全員揃わなければ意味がないので」

 プライベートでは2001年に結婚。

「ものすごく若い時には山口百恵さんのように結婚したら仕事を辞めようと思っていました。母が専業主婦でその姿をずっと見ていたので、それしか知らなかったんですよね。仕事をしながら(家事を)やっていく自分というものを想像できませんでしたし、いい奥さんになりたいという夢もありました。子供を産んで一時期仕事を休まざるを得なくなったんですが、そのうち専業主婦に向いていなかったということに気付きました。家事全般をこなすことに行き詰まりのようなものを感じて、社会と接点を持つことの必要性を痛感させられました」

 そして2006年に本格的に俳優の仕事に復帰することになった──。

(つづく)

石田ひかり(いしだ・ひかり)
1972年5月25日、東京都生まれ。A型。T160㎝。1986年、ドラマで俳優デビュー。1987年、シングル『エメラルドの砂』でアイドル歌手としてデビューを果たす。1991年に公開された主演映画『ふたり』で「第34回ブルーリボン賞」をはじめとする多くの新人賞を受賞。以降、多くの映画やドラマを中心に活躍。最近作に『九十歳。何がめでたい』、『ブルーピリオド』などの映画や『あの子の子ども』、『全領域異常解決室』などのドラマがある。公開待機作に映画『366日』(2025年1月10日公開)がある。

【作品情報】
木ドラ 24「週末旅の極意 2〜家族って近くにいて遠いもの〜」
2025年1月9 日(木) 毎週木曜深夜24時30分〜25時00分 テレ東系にて放映
出演:石田ひかり、甲本雅裕、大原優乃、島村龍乃介
脚本:いとう菜のは
監督:青木達也、松本拓(テレビ東京)、⻆屋拓海
特別協力:ORIX HOTELS & RESORTS (オリックス・ホテルマネジメント(株))
🄫「週末旅の極意 2」製作委員会