昨年、俳優キャリア50周年を迎えた長塚京三。スタートが、フランス留学中に実現した映画『パリの中国人』の主演だったことも知られる。その姿には、隠し切れない知的オーラが漂う。同時に、ウイスキーのCMフィールドで幅広い魅力を輝かせてきた。そんな長塚さんのTHE CHANGEとはーー。【第2回/全4回】

長塚京三 撮影/三浦龍司

――多くの作品に出演されてきましたが、映画ではなく、出演ドラマのなかから、印象に残っている作品やエピソードをひとつ教えてください。

「たまに再放送されたりもするんですけど、『男たちの旅路』ですかね。僕は若い時に左翼の運動家をしていたような役で、東京から釧路まで行く大きなフェリーを拝借するというエピソードがあったんです。山田太一さんの脚本だったんですが、山田さんとずっと後に違う仕事でご一緒したときに“あの作品は良かったね。長塚くんも良かった”と言っていただきました」

『男たちの旅路』・・・特攻隊の生き残りのガードマンと、戦後世代との価値観の違いや信念などを中心に人間の姿を描いた、山田太一さん脚本、鶴田浩二さん主演のNHKドラマ。1976年からスペシャル版を含め全13話が制作され、長塚さんは第2部「釧路まで」(1977)に出演した。

――山田太一さんからお褒めの言葉を。

「当時、僕はまだそんなにキャリアもなくてわけもわからないままやっていたけれど、でもすごく楽しかったのを覚えています。なんどか再放送にもなっている作品ですが、当時演出を担当していたNHKのディレクターは、彼が東大で僕が早稲田で演劇をやっていたときの仲間だったりもして。懐かしさもありました」