表現者ゆえの「孤独でいることと、期待に応えることのジレンマ」
──偶然にも薪とは誕生日と血液型が同じでしたが、人柄などに、共感できたことはありますか?
「共通点は、そのふたつぐらいです(笑)。彼は頭脳明晰なんだけど、幼少期から壮絶な経験をして、親友の鈴木克洋との悲劇的な別れを経て生きています。心に十字架のような重荷を背負っているところは人間くさいし、僕も表現者として責務を背負って生きているので、彼の痛みは身近に思えましたね」
──その、板垣さんが考える“十字架”といいますか、表現者としての責務とは何だと思いますか。
「孤独でいることと、期待に応えることのジレンマ、でしょうか。表現の仕事って、最後は自分で答えを出していくしかないと思っています。ひとり自問自答する作業を繰り返すことで究極の演技になる。“人のために届けよう”って思うと、作品から受けた感情を素直に演技に昇華させたい身としては、邪念が入ってしまう気がして。
でも現場では、たくさんの方と作品を作っていくし、ファンの方々の思いも背負っていく日々です。だからこそ、もちろん独りよがりではダメだよな……と、ジレンマや責任を抱えたうえで、答えを出しています」
──この作品の制作発表では、ダブル主演の中島裕翔さんから「板垣くんはほとんどNGを出さない」と語られていました。
「いやいや、不器用ですよ(笑)。薪の有能ぶりに引っ張ってもらったからそう見えたのかも。薪はMRIで死者が見たものを一度で覚えてしまうし、よどみなく説明口調で話すことが多いから、リズム感を大切にして演じていったんですが、セリフが飛ぶこともあります(笑)。長いセリフのシーンを撮り直すときに、集中しすぎて“はじめはどうだったっけ?”と記憶をたどらないといけなくなります」
板垣李光人(いたがき・りひと)2002年(平14)1月28日生まれ。
2012年に俳優デビューし、『仮面ライダージオウ』(テレビ朝日系)『silent』(フジテレビ系)、大河ドラマ『青天を衝け』『どうする家康』(NHK)などに出演。2021年には『カラフラブル〜ジェンダーレス男子に愛されています。』(読売テレビ・日本テレビ系)で連続ドラマ初主演。翌年は映画『かがみの孤城』で声優業にも初経験。昨年は個展「愛と渇きと。」を開催。
スタイリスト 五十嵐 堂寿
ヘアメイク KATO(TRON)
◆秘密~THE TOP SECRET~
毎週月曜よる10時
正義のために「人の秘密をのぞき見ること」への葛藤を抱えながら未解決事件の真相を追う男たち。語られることのなかった真実と、二人のかけがえのない“絆”が胸を打つ極上のヒューマンサスペンス
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