合格を知ったときは「困りました(笑)」
――ほかの受験者にはなかった度胸を買われたのでしょうか。
「度胸というわけではなかったんです。たしかに受験を楽しいと感じてはいましたが、それは自分の進路がすでに決まっていた安心感が大きかったからだと思います。そのうえで、ある意味、“女優になる”という自分の夢の終止符として宝塚を受験しました。これでもう夢を見るのはやめようと思っていたところに、入れていただいたんです」
――合格を知ったときはどう思いましたか。
「困りました(笑)」
――困ったんですか(苦笑)。
「率直な気持ちとしてはそうですね。そんなつもりではなかったので。家族も反対でしたし。もともと親に内緒で受けたので、“どうしよう”となりましたが、“好きな道を歩かせて欲しい”と父に頼み、進むことができました。 初めて親元を離れるという人生のチェンジ(大学進学)からチェンジ(宝塚音楽学校入学)した瞬間ですね」
―― 今となっては黒木さんの人生から宝塚は切っても切れませんね。
「すべてを教えていただいたところですから。今の自分の礎です」
――宝塚退団後も女優として、また映画の監督を務めるなど、多方面で活躍されています。2024年もドラマ『JKと六法全書』(テレビ朝日)や話題を集めた『燕は戻ってこない』(NHK総合・NHK BSプレミアム4K)、映画『青春18×2 君へと続く道』『明日を綴る写真館』、そしてディナーショーもありました。表現者としてどんな思いを持っていますか?
「表現というよりは、自分ではない女性を“生きている”感覚です。なので、それを“表現する”という客観性は、私にはあまりありません」