「その大きさを体感して驚いてほしい」
「カーリングの中継の魅力って、選手にマイクがついていて、話していることがテレビを見ている人にも伝わることだと思っているんですね。選手がどういうことを考えて、このショットを決めるのかって、聞いていれば、だいたいイメージがつくと思うので、まずは、そこに耳を傾けてもらいたいですね。
選手たちは、聞かれてもオッケーなように話してますし、トップチームはマイクをつけることが当然になっています。
カーリングはもともと紳士淑女のスポーツと言われているので、マイクに気を遣って話すくらいでいいんだと思います。戦術的なことは、初めて見る方には難しいと思うので、そこは解説とか実況を聞いてもらえばいいと思います。
マイクを通して、選手たちのパーソナルな部分、しゃべり方とか、こういう声がけをするんだというところを見てもらえたらいいですね。どんなスポーツでも、推しといいますか、応援したい選手がみつかると、見たくなりますよね。まずは、推しをつくるところから始めてください」
五輪のときにカーリングをテレビ観戦して、その数日間は詳しくなった気分でいるのだが、次に観戦するのは、その4年後になる人も多いのではないだろうか? また、基本的なルールさえ忘れてしまう人もいるだろう。
「そういう声をよくいただきますけど、それでいいって、私は思っています。そのために毎回、常に新規の方が見ていると思って、丁寧に解説しているので。でも、昔は“カーリング? 知ってる知ってる。こういうやつでしょ(とスウィーブ=ブラシでアイスをこするしぐさをする)”だったのが、平昌五輪や北京五輪を経て、ここ数年で変わってきているなと思うんです。それは、“あのときの、あのショットって”というふうに、言ってくださる方が増えていて。見てくださってる方が、どんどんカーリングを知ってきてくれてるなというのは、すごい感じますし、うれしいですね」
今回の日本選手権は、首都圏で初の開催(横浜)となった。もちろん、テレビ観戦のような解説はないが、現地観戦には別の魅力があるという。
「皆さんがまず驚かれるのが、シートと呼ばれる、競技をするリンクの大きさです。ボーリング場ぐらいのサイズ感を想像されていると思うんですけれど、実際には50メートルぐらいあるんですね。だから、まずは、その大きさを体感して驚いてほしいですね。あと石が滑ってく音の大きさ。 現地だと、迫力が全然、違います。ゴーって音を立てながら滑ってく音も聞いてほしいですし、石がぶつかる音もテレビとは全然、違うと思います。
あとはテレビに映らないところで、あの人とこの人がこんなにたくさんしゃべっているんだとか、もぐもぐタイムもいいですが、そんなところにも注目してもらえたら、面白いと思います」
皆さんも、9日まで開催中の日本選手権を現地・横浜で応援するか、NHK-BSで放送されている日本選手権に対する市川さんの丁寧な解説を聞いて“カーリング脳”を鍛え、来年に迫ったミラノ・コルティナ冬季五輪に備えようではありませんか。続く第2回は、仕事に家庭に忙しい毎日を送る市川さんの現在、そして人生の岐路について聞いた。
市川美余(いちかわ・みよ)1989年6月28日生まれ。長野県軽井沢市出身。9歳からカーリングをはじめ、2005年に日本ジュニア選手権で優勝。世代を代表するカーラーとなり、2008年に中部電力に入社。スキップの藤澤五月(現ロコ・ソラーレ)らとともに日本選手権で4連覇(2011年~2014年)を果たすも、冬季オリンピック出場はかなわず、2014年に現役を引退。現在は二児の母として、そして解説者として活動している。また、現役時代にフィジカルトレーニングの一つとして取り組んだピラティスのインストラクターの資格を取得。監修した書籍に「まんがでわかる カーリングの見方!! 市川美余がとっておきの話をデリバリー。」(小学館)がある。