世界中がいま“BONSAI”に熱い視線を送っている

「ヨーロッパの方々は、歴史を重んじるから共感していただけることが多く、いろいろな国にお招きいただきました。エイズ撲滅キャンペーンの一環でイタリアに行ったり、モナコ公国に招かれたときは、パレスでお話した男性がすごくすてきだったんですよ。僕は例によって有名人に疎いから、かっこいいな、気品があって素晴らしい方だなって思っただけで。あとから、グレース・ケリーと結婚したレーニエ3世だと知りました(笑)」

 海外での盆栽人気は数字でも表れている。2023年、財務省の貿易統計によると輸出額は2019年の2倍で、富裕層の趣味として求められているためだという。加熱するばかりの“BONSAI”ブームだが、鈴木さんには浮ついたところはみじんも感じられない。

「中国では異常ともいえるほど盆栽ブームが起きていますが、その背景には文化大革命によって、さまざまな歴史や文化的なものが破壊されてしまったことがあるでしょう。だからこそ、歴史や緑にすごく飢えているように感じます。繰り返しになりますが、盆栽から命の輪廻(りんね)の大切さを見ているのでしょうね。
 韓国でも人気ですが、こちらはアートとして見てくださる傾向が強いです。アートはいま世界的なブームでもありますから、盆栽を広く知っていただけるチャンスだと受け止めていますし、世界中から僕のところにもお弟子さんが来てくれる理由でもあるんです」

鈴木伸二 撮影/有坂政晴