敏腕プロデューサーの口から放たれた口説き文句は?
そうした疑問が次々浮かぶ作品を背負うことになる瀧内さんを(言葉はよくないが) “落とす”ために、国内外に知られる敏腕プロデューサーの口から放たれた口説き文句は、果たしてどんなものだったのだろう。ちょっとした興味が沸くが、“口説き文句”自体への印象は、当の瀧内さんにとっては特段、大きな関心とはならなかったのか、さらりとした返しが戻ってきた。作品を、目の前の役柄を、どう具現化していくかへとすぐに意識が向かうのかもしれない。
「“ちょっと、話してみませんか。興味を持ってくれますか?”みたいなところから始まった気がしますが・・・。あの年代の、激動の昭和を生きてきた方たちの口説き文句というのは、口説いているうちに入らないんじゃないでしょうか。つまりは常套句、言葉遊びとも言いましょうか。何か誉めていただいたとしても、蛇口から出る水みたいなものだと受け止めるようにしていました(笑)」

現場に入ると、奥山監督からは「瀧内さんの好きなようにやってくれれば」と完全に託されたという。78分間の長編を、ワンカットの長回しで撮影した作品を。
「舞台のようにワンカットですべてを2回ほどやりました。最初は実験的にいろんなことをやってみようというお話だったんですけど、監督のなかで“もう撮れた”と判断なさって、その日の2回で終了したんです。私個人としてはトライアンドエラーを繰り返していくことで見えてくるものもありますし、いろんなものを撮っておきたかった気持ちもあったのですが、監督が“OK”といえばOKですから。でも本音を言うと、もう少しやりたかったです(笑)」